中国人は日本の何に関心があるか

2022/04/27 19:56

真子さまと、片親の家庭で育った一般庶民の小室圭さんとの結婚は大変な論議を呼んだ。動画を制作してWeChatのアカウント「静説日本」で配信したところ、わずか3日間で閲覧数が1000万人以上に達した。

真子さまの結婚や運命に対する中国人の関心度は、日本人を上回っているようだ。

寄せられた5000件以上のコメントを見ると、真子さまの勇気に敬意を示し、幸せを祈るとの内容が大部分であり、中には、真子さまの愛に応えて立派に一本立ちするように、との小室さんへのメッセージもあった。

そして、日本への批判コメントはほとんどなかった。

11月の初めに北海道に行き、夜に小樽市の居酒屋で酒を飲んでいた時、店長の佐々木さんと妻の奈津美さんに会った。かつて東京で新聞記者をしていた佐々木さんは、今でも市内で地元誌の編集をしており、奈津美さんは運河のほとりに、顔の脂取り紙などを販売する「ひより」という店を開いているという。

 佐々木ご夫妻の店「ひより」

翌日、その「ひより」に行って奈津美さんに会い、動画を撮影し、同じように「静説日本」に配信したところ、閲覧者数は10万人以上に達した。コロナが落ち着いたら早く北海道に行きたい、とのコメントが多数寄せられたほか、地元の小樽を舞台に撮影された映画「ラブレター」を思い出した人も多かった。1995年の映画であるが、中国ではかなりの人気を集め、主演の中山美穂もずいぶん中国で知られるようになった。

日本を紹介する動画は週に3、4本発表しているが、ここ1か月間で特にアクセスが多かったのがこれら2本であった。このことから、中国人は日本の何に関心を持っているかが見えてくる。

一つは日本の社会や日本人の生活であり、もう一つは、いつになれば日本に旅行に行けるのか、といったことである。

日本の技術については、今回のコロナで関心度が薄くなっていった。技術的にはもうかなりの面で中国が上回り、日本はもはやお手本ではないとの見方が強まっている。四川省・成都のある大学の教員が授業中に日本人のモノづくりについて触れた際、学生から「日本かぶれだ」とのヤジを受けた。のちにこの教員は学校から「講義の内容が社会主義の価値観を表現していない」と見なされ、講義担当を外されて学校図書館に配置転換された。つまり、今の中国社会では、みだりに日本をほめてはならないのである。

中国人はもともと日本の政府にはいい印象がなく、衆議院選挙や岸田政権の運営などへの興味も薄く、大方として「アメリカ帝国主義の手先」だと思っている。

日中両国が国交を正常化してから来年で50年となるが、残念ながら日中関係はいまだに脆弱であり、一たび風が吹けばたちまちにして敵になってしまう。互いに政治問題にこだわりすぎ、経済協力や国民の交流を軽視している。国民間の往来がなければ、理解し合い信頼し合うことも難しく、いつまでも歴史問題や古臭い考えにはまり、互いに用心し合い批判し合い、国同士の関係も遠ざかっていく。

従って、中国人が日本の何を一番知りたいのかを知らなくてはいけない。でないと、中国との交流業務を的確に進めたり、国民感情を深めたりすることもできない。

中国はなにしろ、日本の最大の貿易相手先であり、貿易総額の四分の一を占めている。日中関係を処理する上での一番の原則はやはり、「和をもって貴しとなす」なのである。(徐静波)


【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。第十三回全国政治協商会議特別招聘代表。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。

 講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』(PHP)、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。

 日本記者グラブ会員。