9月28日、映画「りすぼん丸沈没」が中国本土を代表してアカデミー外国語映画賞へ出品されたと公式ブログで発表された。「栄誉の戦いだ。真相を伝え、スポットを浴びて、中国本土を代表して世界の名作と肩を並べ、第97回アカデミー賞『外国語映画賞』を狙う。本当の声を世界に響きわたらせ、共感を呼ぼう」とのメッセージである。監督そしてプロデューサーを務めた方励氏もブログで、「82年前の中国の出来事を世界に伝えたい」と表明している。
1942年、イギリス軍の捕虜1816人を乗せた日本軍の輸送船「りすぼん丸」が香港から日本へと航行していた際、「ジュネーヴ条約」に違反し、捕虜を運ぶことを示す旗や標識を掲げていなかったことで、中国浙江省舟山市の近くでアメリカ軍の潜水艦から被弾した。危機に瀕した日本軍は船を捨てて逃げたが、捕虜の脱走を防ぐために船倉が木の棒で封鎖されていた。このため捕虜らはハッチを突き破り脱出して海に飛び込む。そこへ中国の漁師200人以上が次々とボートで海に繰り出し、日本軍の銃弾を潜り抜けて現場に駆け付け、384人を救い出した。映画「りすぼん丸沈没」はこうした知られざる出来事を描いたものである。
方氏はこの映画で、監督のほかに歴史研究家や海洋科学家といった立場も兼ねて撮影に励み、全編を「進行形」にして真相を披露した。2時間にわたる作品で沈んだ船の調査、ソナーでの探知、生存者の情報集め、さらには救助活動の記録の調査など、事件を隅々までひも解いていった様子が身に染みて感じ取れる。炎が飛び交う戦争のさなかにタイムスリップしたようになり、感慨無量で熱いものがこみあげる。
映画自体も素晴らしいものだが、制作スタッフの裏話もリスペクトすべきものがある。応用地球物理学科卒という理工系出身の方氏は2014年、海洋技術スタッフを率いてりすぼん丸の調査活動に乗り出した。それから8年間、沈んだ船を発見したほか、世界中を巡って経験者やその子孫など380人以上を探し出し、映像を通じてノンフィクションかつドラマチックな歴史究明という事業を成し遂げた。方氏はその事業のために家3軒を売り渡し3000万元(約6.26億円)もの借金を抱えたが、最後までやり抜いた。こうした経験についてネットでは、「理想主義者の家財破滅」といったコメントが相次いでいる。この映画は目下、レビューサイト「豆瓣」の採点で、今年のシネマ作品で最高となる9.3点を獲得している。
(中国経済新聞)