中国の伝統文化と現代的な美術スタイルを融合させた話題のアニメシリーズ『中国奇譚(ちゅうごくきたん)』(英語名:Yao-Chinese Folktales)の初の劇場版アニメ映画『浪浪山の小妖怪』(Nobody /Little Monster of Langlang Mountain)が、2025年8月2日に中国本土で公開されることが決定しました。

『中国奇譚』は、上海美術映画製作所とBilibiliの共同制作によるファンタジー短編アニメ集で、中国独自の「妖怪」をテーマにした全8話構成のオムニバス作品です。総監督は陳廖宇(Chen Liaoyu)氏、プロデューサーには速達(Su Da)氏と朱貝寧(Zhu Beining)氏が名を連ねています。
同シリーズは2023年1月よりBilibiliにて配信が開始され、9月までの総再生回数は2.3億回を突破。Bilibiliでの評価スコアは9.9点、豆瓣(Douban)では8.7点と、極めて高い評価を得ました。
物語は「小妖怪の夏」「ガチョウガチョウガチョウ」「リンリン」「田舎バスに連れ去られたが王くんと仙人」「小満」「鳥と魚」「駄菓子屋」「玉兎」の8編。いずれも中国の伝統文化や郷土的な記憶、SF、命の尊さ、人間性への問いなど、幅広いテーマを幻想的に描いています。時空を超えた想像力豊かな物語群は、中国アニメーションの新たな魅力を世界に発信しています。
2025年7月4日より日本で『中国奇譚』のアニメシリーズの上演が実施され、東京・大阪・名古屋・横浜・福岡の5都市で限定公開されました。

上映作品は「妖怪くんの夏」「リンリン」「売店」「ワンと神様はバスに乗って行った」の4話で、セレクト再編集版として構成。幻想的かつ詩的な映像表現と深みのあるストーリーが観客の心をとらえ、大きな反響を呼びました。
中国アニメの原点・上海美術映画製作所の存在感
本作のもう一つの注目点は、制作を担う上海美術映画製作所の存在です。1957年に設立された中国最古のアニメーション制作会社の一つであり、日本人アニメーター・持永只仁氏の尽力によってその礎が築かれたことでも知られています。
『大暴れ孫悟空』『おたまじゃくしがお母さんを探す』『ナーザの大暴れ』など、水墨画アニメを用いた作品群で、1950~70年代に世界的な評価を獲得しました。近年ではCGやアクション中心の作品が主流となる中、『中国奇譚』はその老舗としての表現力を改めて世に示す作品となりました。

緻密な映像美と独自のストーリーテリングにより、単なるエンターテインメントではなく、アニメーション芸術としての可能性を提示する『中国奇譚』。そのアニメ映画『浪浪山の小妖怪』にぜひご注目ください。
(中国経済新聞)