ワハハ(娃哈哈)帝国の遺産争い

2025/07/25 19:30

2024年2月25日、中国の飲料業界を牽引するワハハ(娃哈哈)グループの創業者、宗慶後が79歳でこの世を去った。彼の死は、年商500億元(約1兆円)を超える飲料帝国の後継者問題に注目を集めた。宗慶後の一人娘として知られ、「ワハハの公主」と称される宗馥莉は、2024年8月にグループ会長に就任し、父の遺志を継ぐべく辣腕を振るった。彼女はブランドの若返りを図り、ADカルシウムミルクや純水といった主力商品で市場を立て直し、2025年第1四半期には売上高700億元(約1兆4366億円)、同比36・7%増という驚異的な成績を叩き出した。しかし、2025年7月、香港と杭州の裁判所で突如提起された訴訟が、ワハハ帝国に激震をもたらした。

 三人のアメリカ国籍を持つ若者――宗継昌、宗婕莉、宗継盛が、「宗馥莉の同父異母の兄弟姉妹」として名乗りを上げ、香港のHSBC銀行に預けられた18億米ドル(約2500億円)の資産凍結と、総額21億米ドル(約3090億円)の信託財産の権利を求めて訴訟を起こしたのだ。このニュースは、宗慶後が「一人娘」の宗馥莉以外に子を持たないと信じられてきた中国社会に衝撃を与え、ワハハの「家文化」を揺さぶる嵐となった。この物語は、宗慶後の隠された家族の秘密と、ワハハ帝国の未来を巡る壮絶な遺産争いの記録である。

帝国の礎と宗馥莉の試練

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