市場拡大が必要な人型ロボット 中国でサプライチェーン形成進む

2025/05/28 14:07

柔軟に動かせる人型ロボットの手には、ワイヤ腱という基幹部品が存在する。見た目はさえず細い紐のようであるが、人体の腱と同じく、様々な動きができるように指をリードするものである。

中科硅紀の創業者で、中国科学院自動化研究所のドクター教官である王鵬( Wang Peng)氏は、「6、7年前にロボットハンドを造った時は、ワイヤ腱は国外の提携先から購入していた。手1本分で数十元とさほど高くはなかったが、手で先の部分を結んでいた」と語る。

中国はロボットのサプライチェーン形成される中、ワイヤ腱も仕入れ先が国内企業に代わり、摩耗性や柔軟性などもだいぶ進歩している。ワイヤ腱の固定部分も規格が一本化して、組み立てや交換が随分と早くなった。

このような切り替えが果たされたのは、人型ロボットの開発が急速に進んでいるためである。王氏は、「バブル」による人型ロボットの急成長や利用促進というプラス面が大きく、中国でのサプライチェーン形成も進んだと見ている。ワイヤ腱だけでなく、モーターの費用も6、7年前の2000元から500元以下に下がっている。

業界自体で見ると、ロボットハンドは人型ロボットが実用化を果たす上でキーポイントになっている。関係者によると、ロボットが自動化への「最後の1㎞」とするならば、手の部分はロボットの「最後の1㎝」だという。

王氏は、「ロボットハンドは、去年前半はまだ注目度が浅く、投資家に対して使い道を説明する必要があった。しかし去年後半になると、人型ロボットを利用する際には『腕の部分』の牽引力が必要ということが意識されるようになった。特に今年の春節後に、われわれと接触を図ろうとする投資家が増えた」と述べている。

ロボットハンドとは、人の手の機能をシミュレートする自由度の高いロボットのエミュレーターであって、コストはロボット全体の15%である。去年設立された中科硅紀は、人の手を真似た一連の商品Casia Handシリーズを発表している。ちなみに王氏の研究チームは中科硅紀設立の10年以上も前から、「腕の部分」を柔軟に動かすための研究を続けていた。

中科硅紀のロボットハンドは、ネジを締め、壊れやすい物をつかむという難しい動きが可能で、主要パーツは100%中国製である。王氏によると、今年の売上規模は1000万元ほどであるが、大量に納入する段階には至っていないという。

王氏は、これから間違いなく「腕の部分」が使い物になって業界全体の成長を促すと見ている。ロボットの最終的な目標は「仕事」であって、危険業務や産業、あるいは家庭でも、下半身部分で特に必要とされるのは「到達力」を備えることだからである。

「下半身の力が軸となる人型ロボットは、用途として今後3年間は教育や研究、エンタメ、デモなどが中心であり、家庭や工場で利用するには技術面だけでなくニーズへの適合といった問題も存在する」と言う。

有名投資家である朱嘨虎氏は先ごろ、「人型ロボットは好調だが商業化への道のりが不透明だ」と業界に冷や水をかける言葉を発し、関係先各社からの投資撤退を進めている。

王氏は、「人型ロボットは実際の場面と結び付けて実用化し、市場拡大を果たせないようであれば、現状から見て、貯め込み競争で生産過剰となってしまう。当社も海外進出への道を探っている」と述べている。

(中国経済新聞)