湖北省を本拠とする上場企業「華康潔浄(301235.SZ)」(Wuhan Huakang Century Clean Technology Co., Ltd.)は、同社の董事長兼実質支配者である譚平涛(Tan Ping Tao)氏が広東省監察委員会によって立案調査の対象となり、留置措置を受けたことを明らかにした。現在のところ、同社は正式な調査協力要請などを受けておらず、調査の内容や進捗については不明だとしている。
譚平涛氏は1975年10月生まれ。1994年5月に湖北省孝感市雲夢県財政局下辛店財政所に入所し、2004年12月まで10年以上にわたり行政部門で経験を積んだ。その後、2005年1月に上海東呉医療浄化工程公司へ転じ、2008年9月まで民間企業で医療浄化関連の事業に従事する。2008年10月には武漢華康世紀潔浄室技術工程有限公司に参画し、総経理や董事長として経営の中心を担いながら、同社の事業拡大を牽引した。2019年11月からは、武漢華康世紀医療股份有限公司の董事長に就任し、同社グループのトップとして現在に至るまで企業経営に携わっている。

会社の発表によると、経営への影響を最小限に抑えるため、董事兼総経理の謝新強氏が暫定的に董事長および法定代表人の職務を代行する。謝氏が対外的な契約署名なども含め各種業務を担当し、譚氏の復帰あるいは新たな役職者選任まで当面この体制が続くという。
華康潔浄は、法人ガバナンスと内部統制は既に整備されており、他の董事・監事・高級管理層は通常どおり職務を遂行していることから、「事業運営に重大な影響はない見通し」と強調している。しかし、市場ではガバナンスへの不安が広がり、8月14日の終値は前日比7.90%安の29.72元となった。
注目すべきは、譚平涛氏が留置される直前に、2度にわたって同社発行の転換社債「華医転債」を大きく売却していた点だ。
華康潔浄は2024年12月に計7.5億元の転換社債を発行しており、譚氏は約313万枚(発行総額の41.85%)、配偶者の胡小艶氏は約22万枚をそれぞれ引き受けた。だが、今年7月30~31日に譚氏は約100万枚を売却し、当時の終値ベースで約1.48億元を現金化。続いて8月1〜4日には夫婦で再び約102万枚を売り、さらに約1.46億元を得た。2回の売却により計約2.9億元を手にした計算となる。売却後、譚氏はなお約134万枚の転換社債を保有している。
こうした経営トップによる大規模な売却は、「情報開示は適切に行われていたか」という点で市場から疑念の声もあがっている。
業績面では、2025年上期に営業収入8.35億元(前年同期比50.7%増)を計上し、純利益も1868万元と黒字転換を果たした。主力の「浄化システム統合事業」が売上高の約85%を占め、引き続き成長を牽引している。また、手元受注残高は38.27億元に達し、医療・実験室・電子クリーンの三分野を軸に安定した事業基盤を維持している。
一方で、営業キャッシュフローはマイナス2.94億元と大幅に悪化しており、調達コストの増加により財務費用も前年同期比76%増に達した。可転債発行に伴う利払い負担が重荷となっているため、資金面の圧力は無視できない。
今回の董事長留置と直前の大口売却は、業績の改善というポジティブな材料を相殺する形でガバナンスへの懸念を高めている。調査の結果と会社側の対応次第では、市場の信頼回復には時間を要する可能性がある。今後の動向が注目される。
(中国経済新聞)