中国の工業情報化部や国家発展改革委員会など六つの部門はこのほど、「消費財の供給と需要の適合性を高め、消費をさらに促進するための実施計画」を発表した。本計画では、2027年までに3つの「1兆人民元級」消費分野と、10の「1千億元規模」消費ホットスポットを創出する目標を掲げている。そのうち、老年(高齢者)用品はスマートコネクテッドカーや消費電子と並び、次の1兆人民元規模市場として重視されている。
老齢化の進展が巨大市場を後押し
中国では急速に高齢化が進み、2024年には65歳以上の人口が2億2,000万人に達し、全人口の15.6%を占めた。今後も高齢者の割合は拡大し、「時間もお金もある」シニア層が新しい消費の主役となることが期待されている。

実際に、老年用品市場の規模は2014年の約2.6兆人民元(約52兆円)から、2024年には約5.4兆人民元(約108兆円)へと倍増し、年平均成長率は7.3%に達している。いわゆる「銀髪(シニア)経済」の中核分野として、今後もさらなる拡大が見込まれている。
本計画が示す、具体的な方向性
この実施計画では、老年用品の供給拡大と質の向上に向け、以下のような重点施策が示されている:
高齢者向け製品の研究・開発の強化、介護ロボット、多機能介護ベッド、健康モニタリング機器など、介護や健康管理に直結する製品の開発を加速。高齢者の自立支援や介護負担の軽減につなげる。
生活の質を高める商品開発
快適さ・機能性・デザイン性を兼ね備えたシニア向け衣料、咀嚼や飲み込みやすさに配慮した食品、機能性の日用品など、高齢者の多様なニーズに応える商品供給を強化。

供給体制と販売環境の整備
良質な老年用品の普及キャンペーンや企業支援、住宅の高齢者対応改修の推進、製品・サービスの推奨リスト整備などを行う。また、ECサイトやスーパーなどに「シニア向け消費」専用コーナーを設け、購入しやすい環境を整える。
すでに動き始めた各業界の「適老化」対応
実際に、医療機器、介護、日用品などさまざまな業界で「高齢者対応(適老化)」の取り組みが進んでいる。
たとえば医療機器メーカーは、高齢者に多い心血管疾患や神経変性疾患に対応する機器の開発を加速している。特に、認知症(例:アルツハイマー病)向けのスクリーニング技術は、第8回中国国際輸入博覧会でも多くの新製品が展示され、注目を集めた。
また、聴覚健康の分野でも市場が拡大しており、海外メーカーが中国市場へ投資を強める一方で、国内メーカーもAIを活用した新しい補聴器の開発に乗り出している。
なお、栄養食品分野には課題も。一方で、シニア向けの栄養強化食品分野は、まだ専門の統一基準が定められておらず、バラつきが大きい状態だ。品質保証と評価の制度整備が急務とされている。
中国における高齢化の急速な進展を背景に、シニア用品市場は今後、消費拡大の重要な柱となることが期待されている。今回の実施計画による政策支援を受けて、関連業界の技術革新やサービスの改善が進めば、高齢者の暮らしの質や選択肢は、ますます多様かつ高水準になるだろう。
(中国経済新聞)
