11月26日、テスラの陶琳(タオ・リン)副社長(グローバル副総裁)は中国のSNS「Weibo」で、「テスラが中国製部品を排除する計画は一切ない」と明言し、米メディアが報じた“中国部品排除説”を全面的に否定した。
発端となったのは、11月15日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道。同紙は「米中間の地政学リスクの高まりを受け、テスラが米国向け車両について中国製部品の使用を段階的に減らすようサプライヤーに指示した」と伝え、「今後1〜2年で中国製部品を他地域製に全面的に置き換える方針だ」とする関係者の証言を掲載した。この報道は世界的な波紋を呼んでいた。

これに対し陶琳氏は即座に声明を発表し、次のように反論した。
「アメリカでも中国でもヨーロッパでも、テスラは世界中の生産拠点で同じ厳格かつ客観的な基準によってサプライヤーを選定しています。品質、総合コスト、技術の成熟度、長期的な供給の安定性が基準であり、原産国や地理的要因が排除の理由になることはありません。」
さらに同氏は、上海工場が現在400社以上の中国企業と取引しており、そのうち60社以上がテスラのグローバル調達ネットワークに組み込まれていることを強調。むしろ「中国サプライヤーへの依存度は高い」ことを示した形だ。
自動車業界では、中国はバッテリー材料、モーター部品、電子部品、希少金属加工などで圧倒的な存在感を持つ。特にリチウムイオン電池の正極材・負極材、セパレーターといった主要部材では、世界シェアの6〜8割を中国企業が占めており、短期間で「中国製を完全に排除」するのはコスト面でも技術面でも極めて難しい。
香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)も、25日付の記事で専門家の見解として「非重要部品の一部を他地域に移すことは可能だが、広範な脱中国化は現実的ではない」と指摘している。
WSJ報道の背景には、トランプ政権復帰後の対中追加関税や、米商務省による中国製部品への規制強化への懸念があるとみられる。しかしテスラは、生産の半分以上を上海ギガファクトリーが占める“世界で最も中国依存度の高い”自動車メーカーであり、中国は米国を上回る最大の販売市場でもある。
イーロン・マスクCEO自身も、「中国はテスラにとって第二の故郷だ」と繰り返し語っており、企業としては地政学リスクよりも、コスト、品質、安定供給を優先せざるを得ないのが実情といえる。
(中国経済新聞)
