舞劇「朱鷺」主演・朱潔静、がん闘病を乗り越え「梅花賞」を受賞

2025/05/24 11:28

上海歌舞団の首席舞踊家であり、舞劇「朱鷺」の主演として日本でも名を馳せた朱潔静(シュ・ジエジン)が、2024年に乳がんの診断を受けた。この衝撃的な知らせは、彼女の世界を一瞬にして暗闇に突き落とした。恐怖と絶望が押し寄せる中、彼女は深い不安に苛まれた。

朱潔静は16歳で舞踊学校を卒業後、上海歌舞団に入団。最初は群舞のダンサーとして活動していたが、17歳の時に転機が訪れる。劉迎宏との共作ダンス作品「根之雕」で、彼女は卓越した技術を披露し、中国舞踊界の最高峰である「荷花賞」金賞を受賞。この受賞を機に、彼女は舞踊界で注目を集め、キャリアを大きく飛躍させた。その後も「朱鷺」「覇王別姫」「天辺的紅雲」など数々の舞劇で主演を務め、どの役柄も心から演じ、ダンスを通じて物語を紡いだ。24歳で上海歌舞団の首席舞踊家に就任し、舞踊芸術の頂点に立った。

「朱鷺」は2010年の上海万博をきっかけに創作され、2014年の初演以来、日本への4回の巡演を成功させた。特に2025年には、2カ月間で55公演を終えたばかりだ。

しかし、がんとの闘いは過酷だった。朱潔静は左乳房切除と腋下リンパ節郭清手術を受けた。手術のダメージで身体は極端に衰弱し、8カ月にわたる治療期間は身体的・精神的な苦しみの連続だった。憔悴していく自分を鏡で見つめ、夜中に涙を流しながら、彼女は舞台に戻れるのか、ダンスの夢を追い続けられるのかという不安に苛まれた。

それでも、彼女の心にはダンスへの情熱と執念が燃え続けていた。この炎が、暗闇の中を進む彼女の唯一の光となり、過酷な治療を耐え抜く力となった。2025年1月の春節聯歓晩会のリハーサルでは、25回の放射線化学療法を終えたばかりで、手術の傷も癒えていない状態だったが、家族に内緒で北京へ向かい、傷を抱えながら「幽蘭」の稽古に臨んだ。

彼女の不屈の努力は報われた。2025年5月11日、朱潔静は舞台に復帰し、再び「朱鷺」を踊った。舞台上での彼女は、軽やかな身のこなしと優雅な動きで、病の苦しみを微塵も感じさせなかった。すべての動作、すべての眼差しに、ダンスへの愛と執念が宿り、観客は彼女の卓越した技術と独特の芸術的魅力に魅了された。

そして5月21日、彼女にとって忘れられない日が訪れた。舞劇「朱鷺」での圧倒的な演技が評価され、第32回中国戯劇最高の「梅花賞」を受賞したのだ。この名誉は、長年にわたる舞踊芸術への献身と、病を乗り越えた彼女の不屈の精神への最高の称賛である。受賞の舞台でトロフィーを手にし、涙と喜びに満ちた彼女はこう語った。「今日、ダンサーとして新たな使命と価値を見出しました。天が私をダンサーに選んだのだから、私はこの仕事を最後まで、美しくやり遂げたい。」

(中国経済新聞)