中国で急増した「ロシア商品館」、半年で相次ぎ閉店へ、“富の神話”が一転“笑い話”に

2025/07/29 10:48

2024年末から2025年初頭にかけて、中国全土で突如として広がった「ロシア商品館」ブームが、わずか半年で急速に終焉を迎えている。青地に白字の看板、ロシア語の音楽、赤・白・青のトリコロール装飾など、一時は中国の都市部を席巻した異国情緒あふれる店舗が、次々とシャッターを下ろしている。

2025年1月、企業情報サイト「天眼査」によると、中国国内のロシア関連企業は3400社を超え、2023年比で800社以上(前年比26%増)増加、過去3年間で約85%もの伸びを記録した。しかし、これは表面的な活況にすぎなかった。

各地で展開されたフランチャイズ店舗は、「粗利率50%、3か月で元が取れる」といった誘い文句で加盟希望者を集め、加盟金は10万~30万元(約200万~600万円)。ハルビン、上海、北京、杭州などの都市には、“熊”や“ハラショー(ロシア語で「良い」)”をテーマにした装飾の店舗が乱立し、一時は新たな「富の神話」が語られていた。

しかし、消費者の期待はすぐに裏切られた。売られていた「ロシアパン(大列巴)」は実際にはハルビン製で、中国国内のGB/T 209811標準に基づいて作られたものであり、「ロシア風」は単なるマーケティングだった。その他の「ロシア風牛筋ソーセージ」「キャメルミルクキャンディ」なども多くは国内製で、実際にはロシア人自身も見たことのない商品だった。

SNSでは「偽ロシア商品」のレビュー動画が話題となり、再生数は瞬く間に億を超え、世論が炎上。2025年1月には、ロシア駐中国大使館が「中国国内に正式認証されたロシア国家館は6店舗のみ」と公式声明を発表し、これが事実上の「引導」となった。

価格に関する不満も噴出。店頭価格がECサイトより2~3倍高く、例えば「カチューシャチョコレート」は店舗で49元、ネットでは25元。仕入れ価格3.3元の品が15元で販売されることもあり、消費者は「高すぎる」と不満を漏らした。

さらに、同質化競争も深刻化。杭州のある通りにはロシア商品館が4~5軒並び、「珍しさ」はあっという間に消費された。伝統的なロシア食品は高糖・高塩で、味の好みに合わず、「一度食べれば十分」と言われ、リピート率も急減。商品は売れ残り、山のように積み上がり、やがて値下げセールで処分されるようになった。

2025年初頭からは監督当局も動き出し、上海市では47店舗を対象に2度の調査を実施し、6店舗に違法の疑いで立件。杭州や南京では、輸入品と国産品の明確な表示を義務づけ、虚偽広告や中国語ラベル不備などの取り締まりが強化された。その結果、看板を隠したり、契約満了前に撤退したりする店舗も現れ、撤退劇は混乱を極めた。

データが現実を物語る。上海浦東新区のある店舗は開業からわずか40日で16万元の赤字を出し、閉店に追い込まれた。杭州市内のロシア商品館も最盛期の十数軒から7月には6軒に減少。全国では約44%のロシア関連企業が「経営異常」と記録され、「拡張神話」は一夜にして崩壊した。

わずか半年で栄枯盛衰を体現した「ロシア商品館」ブーム。その舞台裏には、マーケティングの過剰、実態との乖離、消費者の目の厳しさ、そして規制の強化といった現代中国社会の縮図があった。

(中国経済新聞)