中米共同声明:関税一部停止と対話継続を約束

2025/05/12 17:30

5月12日、中国と米国は「中米ジュネーブ経済貿易会談共同声明」を発表し、5月10日から11日にかけてスイス・ジュネーブで開催された高官級会談の成果をまとめたもので、両国が相互関税の一部停止と新たな協議メカニズムの設立で合意したことを示している。

今回の共同声明は、米中間の貿易摩擦が急激にエスカレートした状況下で発表された。トランプ政権2期目の開始後、米国は中国商品に対し最大145%の追加関税を課し、中国も米国製品に最大125%の報復関税で対抗。この異例の高関税戦争は、両国経済に深刻な影響を及ぼした。米国西海岸の主要港では中国からの貨物船の到着が一時ゼロとなり、ロサンゼルス港や長滩港の貨物取扱量はそれぞれ31%、35~40%減少。米国では消費者物価の上昇や商品不足の懸念が高まり、中国でも輸出企業の業績悪化が問題となった。

こうした状況を受け、5月10日から11日にジュネーブで開催された会談では、両国が関税引き下げや貿易摩擦の緩和に向けた妥協点を探った。会談には、中国側から何立峰副総理、米国側からベッセント財務長官とグリア通商代表が出席し、2日間にわたり集中的な協議を行った。会談終了後、双方は「大きな進展があった」と発表し、今回の共同声明に至った。

共同声明の最大のポイントは、両国が24%の関税を90日間停止し、一部の追加関税を撤廃することで合意した点だ。これにより、米中間の貿易コストが部分的に軽減され、物流の停滞や消費者物価への圧力が緩和される可能性がある。特に米国では、クリスマス商戦を控えた時期に商品不足を回避できるとして、小売業界から歓迎の声が上がっている。一方、中国の輸出企業にとっても、関税負担の軽減は業績回復の追い風となる。

また、継続的な協議メカニズムの設立は、米中が対立をエスカレートさせるのではなく、対話を通じて問題解決を図る姿勢を示した点で重要だ。ブルームバーグは、「今回の合意は完全な解決ではないが、貿易戦争の『休戦協定』として機能する」と分析。X上の投稿でも、「関税の一部停止は市場にとってポジティブなシグナル」との声が聞かれる一方、「90日後の再評価が新たな火種になる可能性もある」との慎重な意見も見られた。

共同声明は貿易摩擦の緩和に向けた前進だが、米中間の根深い対立が解消されたわけではない。米国は中国に対し、技術移転の強制や知的財産権の保護、フェンタニル問題など、関税以外の議題で圧力をかけ続けている。一方、中国は米国の「一方的な保護主義」を批判し、さらなる譲歩には慎重な姿勢を示している。共同声明では、90日後の関税停止期間終了後にどのような措置が取られるかは明示されておらず、この不確実性が市場の懸念材料となっている。

さらに、地政学的な緊張(台湾問題や南シナ海問題)や、米国の対中技術輸出規制など、経済貿易以外の分野での対立が、協議の進展を阻害する可能性もある。ウォール・ストリート・ジャーナルは、「今回の合意は短期的な緊張緩和には寄与するが、構造的な問題解決には長い道のりが必要」と指摘している。

今回の会談の開催地であるスイスは、中立国として米中間の対話を仲介する役割を果たした。ジュネーブは過去にも米ソ首脳会談など歴史的な交渉の舞台となっており、今回の会談もスイスの外交的成功として評価されている。国際社会は、米中が貿易摩擦を緩和することで、グローバルサプライチェーンの混乱やインフレ圧力を軽減することを期待している。特に、日本や欧州の経済界は、米中対立の収束が世界経済の安定につながるとの見方を示している。

「中米ジュネーブ経済貿易会談共同声明」は、米中間の高関税戦争に一時的な「休戦」をもたらす重要な一歩となった。24%の関税の90日間停止、一部関税の撤廃、継続的な協議メカニズムの設立は、両国が対話を通じて経済的損失を最小限に抑えようとする姿勢を反映している。しかし、90日後の関税再評価や、技術・地政学分野での対立など、課題は山積している。

12日の声明発表後、グローバル市場は一時的に楽観ムードに傾いたが、投資家や企業は今後の展開を注視している。日本を含む国際社会にとって、米中の動向は経済や貿易に大きな影響を与える。米中が今回の合意を土台に、持続可能な協力関係を構築できるか、その行方が注目される。

(中国経済新聞)