8月から、中国のインターネット業界で「AI」をめぐるAI人材をめぐる争奪戦が水面下で始動した。阿里巴巴(アリババ)、字節跳動(バイトダンス)、騰訊(テンセント)、美団(メイトゥアン)、小米(シャオミ)などの大手企業は相次いで2026年卒の新卒採用を開始し、「Top Seed計画」「阿里星計画」「青雲計画」「北斗計画」などの各種人材プログラムを打ち出している。
募集職種を見ると、プライバシーコンピューティング、機械学習、大規模言語モデル応用などが最も人気の高い分野となっており、ほぼ全ての企業が「AI人材を抱える者が未来を支配する」という明確なメッセージを対外的に示している。
就職活動が本格化する中で、多くの学生が説明会を回りながら内定獲得に苦戦している一方、AIを専攻する周華氏(仮名/某名門大学大学院)は、すでに複数の大手企業から内定を受け取っていた。「アリババ、テンセント、バイトダンスからオファーをいただきました。どこも給与水準は似ており、正直、かなり悩みました」と語る。最終的に選んだのはバイトダンスだった。

決め手となったのは、半年前に経験したインターンだ。当時、研究室で論文に取り組んでいた周氏の元に、同社からインターンのオファーが届いたという。その数か月のインターンを通じて企業文化や業務内容を理解し、卒業前に正式なオファーを受けた。
バイトダンスは、論文をきっかけとしたリクルーティングを積極的に行っていることでも知られる。『晩点』によれば、2023年末ごろから創業者の張一鳴氏がAI研究者を個別訪問し、その中には博士課程在籍中の学生も含まれていたという。
さらに周氏にとって大きな魅力となったのは、同社が保有する「算力」の豊富さだ。在学中、大規模モデルのトレーニングを行う際に計算資源が不足し、「アイデアを試すことすらできない」ことが頻繁にあったと振り返る。「ここなら、自分のアイデアを思う存分試せると思いました」と話す。実際、テンセントやアリババがバイトダンスから算力を買い取ったとの報道もあり、その豊富なリソースが裏付けられている。

モルガン・スタンレーのレポートによると、阿里巴巴、テンセント、バイトダンス、百度、快手、美団などのAI投資は2022~2027年にかけて右肩上がりとなる見込みで、バイトダンスは2023年以降、他社を上回る投資額を続けている。
海外でもAI人材の争奪戦は激しさを増している。Metaのマーク・ザッカーバーグ氏は、OpenAIやAppleから優秀な研究者を引き抜くため、最大で4年間3億ドルという破格の報酬を提示したと報じられている。OpenAIのサム・アルトマンCEOは、Metaが1億ドルの契約金を提示したとして公に批判した。
国内でも同様の動きが広がっている。バイトダンスのTop Seed計画は高職級・高報酬で知られ、場合によっては年収300万元を超えるオファーが提示されることもある。ファーウェイが2019年に発表した「天才少年計画」では年収が89万元〜201万元だったが、現在のAIブームではそれを大きく超える報酬が提示されている。
あるヘッドハンターによると、AI研究・開発職の月給10万元クラスはもはや珍しくなく、高いポジションでは求人票に報酬を明示せず、面談で個別に条件を提示するケースも多いという。

今年の秋採用では、こうした傾向がより鮮明になっている。アリババは7,000人以上の新卒を採用する予定で、そのうちAI関連が6割以上を占める。阿里雲、阿里国際、釘釘などの部門では8割近くがAI関連ポジションだ。マルチモーダルAIやデジタルヒューマン、医療AI、具身知能といった最先端プロジェクトに携われるチャンスがある。
テンセントも、技術・プロダクト・デザイン・マーケティングなど70職種以上を公開。「AI+」をキーワードに、AI関連の採用枠を大幅に拡大している。
このAI人材ニーズの拡大は、採用プラットフォームにも波及している。前程無憂(51job)はAI求人を独立カテゴリーとして設置し、智聯招聘は“AI校招アシスタント”機能を導入した。BOSS直聘によると、新設されたAI関連ポジションは前年比64%増、AI関連職への検索数は34%増となっている。

AI人材をめぐる競争はすでに従来の「採用」の枠を超え、一部の企業は研究者や学生のもとへ直接出向き“口説く”フェーズに入っている。熾烈な“人材戦争”の行方は、中国のAI競争力そのものを左右することになるだろう。
(中国経済新聞)