中国の銀行業界で、実店舗の閉鎖が急ピッチで進んでいる。国家金融監督管理総局(金監総局)の公式サイトによると、12月8日時点で2025年に認可を受けて退出した銀行の対面型店舗は9,600店超に達し、前年を大きく上回った。なかでも農村金融機関が全体の大半を占め、業界再編の中心的存在となっている。
商業銀行の退出6,747店、8割は農商行
金監総局の「金融許可証情報」によれば、年内に退出が確認された商業銀行の実店舗は6,747店。前年(2,533店)から大幅な増加となった。
内訳を見ると、農村商業銀行(農商行)が5,446店と全体の約8割を占め、突出して多い。これに続くのは国有大手銀行で692店、股份制銀行277店、都市商業銀行273店、外資系銀行59店となっている。
国有大手6行では、郵政貯蓄銀行が255店で最多、次いで工商銀行と建設銀行がそれぞれ136店だった。なお、住宅貯蓄銀行や民営銀行では年内の退出データは確認されていない。
今年最初に退出認可を受けたのは、中原銀行三門峡文博城支店(1月2日)。直近では、工商銀行福州小橋支店が12月5日に退出している。
一方で、店舗の新設も同時に進んでいる。12月8日までに商業銀行の新設認可店舗は7,101店に上り、そのうち農商行が6,161店を占めた。
背景には、省級農村信用社連合(省聯社)改革の進展がある。例えば、5月16日には内モンゴル農商銀行の傘下支店2,197店が一括して設立認可を受けており、単純な縮小ではなく「再編を伴う再配置」が進んでいることがうかがえる。
農商行以外でも、農村信用社は年内に2,022機関減少(前年より1,400超増)、村鎮銀行は796機関減(前年は364)、農村合作銀行は71機関減(前年は10)と、農村系金融機関の整理が急速に進んでいる。
2025年の政府活動報告では、地方中小金融機関について「市場化・法治化の原則に基づき、資本補充、合併再編、市場退出を組み合わせたリスク解消と転換発展を推進する」方針が示された。
『2024年中国金融安定報告』によると、高リスクと分類された銀行は357行で、主に農村合作銀行や村鎮銀行に集中する。もっとも、これらの銀行の資産規模は銀行全体の約2%にとどまる。
こうした流れの中、国有大手銀行による村鎮銀行の吸収・再編(いわゆる「村改支」)が本格化している。工商銀行は6月、重慶璧山工銀村鎮銀行を買収し、同地に支店を新設。農業銀行も傘下の6村鎮銀行を100%子会社化するなど、大手による主導的な再編が進む。さらに11月には、工商銀行が錦州銀行の資産・負債・店舗・人員を引き受けることが公表され、地方銀行再編の象徴的な案件となった。
大手銀行は店舗数の「スリム化」を進める一方、県域や重点地域への再配置を強めている。工商銀行は上半期に153店を最適化調整し、県域カバー率を87.4%まで引き上げた。農業銀行も県域店舗比率を56.6%に高め、農村向け金融サービスを拡充している。
(中国経済新聞)
