バイトダンス、AI動画モデル「Seedance 2.0」を公開、動画生成は新たな段階へ

2026/02/10 20:30

2026年2月、字節跳動(バイトダンス)は、同社のフラッグシップAI動画サービス「即夢(Jimeng)」の公式サイトにおいて、新たな動画生成モデル「Seedance 2.0」を静かに公開した。その映像表現のリアルさは、コンテンツ制作者の想像を大きく超え、公開直後から国内外のソーシャルメディアで一気に話題となった。

一般ユーザーが投稿した生成動画を見ると、Seedance 2.0は実在の人間と見分けがつかないほど写実的な映像を生み出し、動作のつながりも極めて自然だ。さらに、映像内容に即した音声が自動的に付与されており、完成度の高さが際立っている。

公式サイトによれば、Seedance 2.0はマルチカットによる物語表現能力を大幅に強化し、映像と音声の同期精度も向上したという。

「単独の人物シーンでも複数人のシーンでも、登場人物のセリフ、環境音、映像が精密に同期し、これまでにない没入感を実現する」としている。

今回の発表は、バイトダンスのAI動画モデルがこれほど集中的な注目を浴びた初めてのケースであり、ゲーム業界やコンテンツ制作業界に大きな衝撃を与えている。

「Seedance」は、バイトダンスの大規模言語モデル開発チーム「Seed」が手がけるAI動画モデルのコードネームで、2025年には2度の大規模アップデートが行われた。

まず、2025年6月11日に公開された「Seedance 1.0 Pro」は、フルHD(1080P)の高品質映像を、複数のカットを途切れなく切り替えながら生成できる点を特徴とし、被写体の動きの安定性や映像の自然さを重視していた。

続く同年12月の「Seedance 1.5 Pro」では、映像と音声の同期機能が強化され、環境音、BGM、人物の声を同時に生成できるようになったほか、複数人・多言語での会話にも対応した。

もっとも、これらの従来モデルは、OpenAIの「Sora」など主流の動画生成モデルが技術的な飛躍を遂げた後に追随する形で機能を実装したに過ぎず、先行優位はなかった。また、競合である快手(クアイショウ)の「可霊(Keling)」と比べると、進化のスピードが遅いとの指摘もあった(関連記事「快手とバイトダンス、AI動画モデルで競争 短編ドラマが先行実験」)。

しかし、Seedance 2.0の登場によって状況は一変した。

登場人物の一貫性やカメラワーク(撮影視点の動き)が大きく向上し、映画業界で「意図的なカット設計」が重要な技術指標とされる中、本モデルは“監督クラス”の創作ツールとして位置づけられている。

Seedance 2.0は、二系統の拡散型トランスフォーマー構造を採用し、テキストや画像から映画品質の動画を生成する。詳細な指示文を入力するか、1枚の画像をアップロードするだけで、60秒以内に音声付きのマルチカット動画を生成できる。

最大の特徴は、マルチカットによる物語生成機能だ。

単一の指示から複数の関連シーンを自動生成し、すべての場面で登場人物、ビジュアルスタイル、雰囲気の一貫性を保つ。手作業での編集を必要とせず、「導入からクライマックスまで、完全な物語構成をプロ水準の連続性で制作できる」と公式は強調する。

さらに、画像・動画・音声・テキストを自由に組み合わせるマルチモーダル参照入力にも対応。人物設定用の画像、シーンの雰囲気を示す資料、参考となるカメラワーク動画、背景音楽などを同時に活用できる。

これにより、従来の“運任せ”の生成から、制御可能で量産可能な制作プロセスへと進化し、生成成功率は90%以上に達したとされている。

映像と音声の同期も革新的だ。登場人物に合った自然な声質を生成し、環境音やBGMとも違和感なく統合されることで、動画は「無声映像」から「完全な音響体験」へと進化した。

Seedance 2.0が一躍注目を集めるきっかけとなったのは、2026年2月9日夜に、中国発の話題作ゲーム『黒神話:悟空』のプロデューサーであり、ゲームサイエンス創業者の馮驥(フェン・ジー)氏が微博(Weibo)に投稿した評価だった。

馮氏は本モデルを「これまでで最強の動画生成モデル」と評し、「AIGC(AI生成コンテンツ)の幼年期は終わった」と断言した。

同氏によれば、Seedance 2.0は動画制作コストを劇的に引き下げ、従来の制作フローそのものを再構築するという。動画制作のハードルは大幅に下がり、「ゲーム開発の中核部分はまだAIに置き換えられていないが、動画は今後、カスタマイズ化・リアルタイム化・ゲーム化が進み、新たなエンターテインメント形態になる可能性がある」と展望を示した。

Seedance 2.0の登場は、AI動画生成を「おもちゃレベル」から「産業レベル」へと押し上げた。短編ドラマ、アニメ風作品、EC向け動画などの分野では量産が可能となり、制作コストと制作期間の大幅な短縮が見込まれている。

中銀証券のレポートも、「マルチモーダル参照、カットの一貫性、映像と音声の同期、自動ストーリーボード生成といった技術的突破により、AI動画の制御性と安定性は飛躍的に向上した」と高く評価している。

(中国経済新聞)