北京にて・現地の最新情報(その4)

2025/12/15 15:30

長年住み慣れた北京への「里帰り」期間も残り少なくなり、寂しさも感じ始めた中、この日は朝早くから市の中心部にある「龍潭中湖公園」でランニングを楽しんだ。

  • この日一緒に走ったメンバー。左が袁立竹さん、右が劉宝昇さん。

ランニングを「楽しんだ」というより、ペースを設定した本格的な長距離練習で、1周2560メートルのコースを5周ほど走った。写真の袁さんと劉さんはそれぞれ65歳、64歳だが現役バリバリのランナーで、劉さんは今年3月の石家荘マラソンを3時間18分で走破したという。

このコースは2年前に北京を訪れた時も走ったが、今回はランナーの数が一段と増えており、このシリーズ「その2」で紹介した森林公園と並び今やランナーの一大拠点となっている。

  • コース上に書かれた激励の言葉。「走ることは人生のごとく。やる気があれば体も動く」といった意味。

実はこの日、子供たちを連れて夕方に再びここを訪れたところ、一段とランニングに特化した場所になっていることに気づいた。まず、中国の公園はおおむね午後5時ごろに閉園となるが、ここは夜10時まで空いており、コース沿いに電灯があってナイトランができるようになっている。

  • コース沿いにある休憩所。

“跑者”とはランナーの意味で、“驿站”は辞書には「宿駅」と書かれてあるが現在では「休憩所」の意味であり、この場合はランナー用語で「ランステ」(ランニングステーション)である。またこの時期は出走直前までベンチコートを着るものだが、衣類をかけておく公共のフックもあった。ランニング施設が大変充実している。

  • 上の写真はミニ遊園地、下の写真は雪滑り施設などの準備作業。

ここは池であるが、結氷する冬場は子供向けの雪遊びレジャーの場となる。このように子供連れでも十分楽しめる憩いの場である。

中国のランナーはおおむね、日本の長距離界に対する関心が非常に強い。この日はランニングの後で袁さんらと食事を共にしたが、先ごろ日本記録を更新した大迫傑選手について、中国のスポーツブランド「リーニン」(李寧)がスポンサーになっていることもあり、随分と話題になった。また箱根駅伝への関心も高く、正月にわざわざ日本まで見に行く人もいる。

以下、ここ数日間に身の回りや街中で見かけた小ネタを紹介しよう。

  • 自宅で使用しているシャンプー。“力士”とはヘアケアブランド「LUX」(ラックス)の音訳であり、「相撲取り」という意味ではない。
  • 見慣れない漢字であるが実はこれ、日本で大人気の動画共有アプリ「TikTok」のことである。大変立派な建物だった。
  • 飲食店で見かけた宣伝ポスター。“鹌鹑”とはウズラのことで、中国ではウズラは肉も食べるようだ。

なお“鹌鹑蛋”は辞書には「ウズラの卵」と書かれているが、日本では普通、ウズラの肉は食べないので、単に「ウズラ」と訳せばよい。逆にこれを中国語に訳す場合、“鹌鹑蛋”の“蛋”はもちろん省略できない。

似たような例で、“扇贝”は辞書には「ホタテガイ」と書かれてあるが、普通は単に「ホタテ」という。翻訳の仕事は訳漏れだけでなく「訳し過ぎ」にも注意しなくてはいけない。(森 雅継)

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【筆者】森雅継、東京都出身、早稲田大学商学部卒。北京在住歴17年で中国人の妻との間に2児、現在は家族4人で千葉県に在住。