今年二月の春節、中国に足を運んだ。今年は朗報が立て続けに二件発生したことで、例年とは違った春節であった。一つは、浙江省杭州市で誕生した大規模言語モデル(LLM)のdeepseekが世界に名を馳せ、アメリカのトランプ大統領をもうならせる存在にのぼり詰めたことである。open A1の十分の一の資金で、わずか数か月でChatGDP4.0に匹敵するLLMを若手スタッフが開発したことに、多くの中国人が誇りを感じ、テクノロジーに対する自信が植え付けられた。
もう一つは、アニメ映画「ナタ2」が興行収入120億元という新記録を打ち立て、今もその額を伸ばし続けていることである。中国の伝説を物語にしたこの映画は北米など海外にも広まっており、長年続いている中国映画として、興収の世界ランキングがアメリカの「カンフー・パンダ」や日本アニメ界の大御所・宮崎駿氏の各作品を上回る8位となり、中国で文化に対する自信が植え付けられた。

中国経済は新型コロナウイルスの後からひたすら下り坂をたどり、特に不動産や消費市場がまるで振るわず、1990年代の日本のバブル崩壊後のような症状が続いている。漸落傾向に歯止めをかけて経済を振興すべく様々な策が打ち出されてはいるが、効果ははかばかしくなく、民間企業は受注を失い品物が売れず、上海ではシャッター通りが随分と目に見える。このため多くの人が職を失った。スターバックスが中国事業を売却するという情報も出ている。