8月に入って以降、中国の公募ファンド市場では「発起式ファンド」をめぐる清算リスクが改めて浮き彫りになっている。8月だけで新たに6本の発起式ファンドが“清算予告”を発表し、業界では「3年の試練」と呼ばれる運用試験の行方に注目が集まっている。
発起式ファンドは、自社拠出による最低1,000万元(約2億円弱)の出資のみで設定できるという柔軟性の高さから、近年多くの運用会社が新規設立に活用してきた。一方、設定から3年後に純資産残高が2億元を下回ると、自動的に契約が終了し清算に入らざるを得ないという厳格な規定が設けられている。
今年に入ってからすでに166本の公募ファンドが清算されており、そのうち65本(約4割)が発起式ファンドである。清算対象の多くが株式偏重型の混合ファンドやFOF型ファンド、パッシブ指数型ファンドであることから、業界関係者の間では「発起式=“ミニファンド”化が常態化している」との指摘も出ている。

実際、市場に残る発起式ファンド2,279本のうち、純資産が2億元を下回るのは1,325本に上り、全体の58%を占める。とくに2022年下期以降に設定されたファンドでは約8割が2億元のラインを突破できておらず、今後3年間で大規模な清算ラッシュに発展する可能性がある。
また業績面も必ずしも順調ではない。市場調査会社Windによると、年初来で100%を超えるリターンを記録した発起式ファンドが7本ある一方、約130本がマイナスとなっている。さらに、設立以来の累計リターンでは268本が元本割れとなっており、このうち9本は50%以上の大幅なドローダウンを記録している。
最近清算に入ったファンドの一例として、2022年8月に設定された「ポンヤン消費業種ファンド」は、2025年に入ってから+23.05%と堅調な成績を残していたものの、設立以来資産規模が一度も5,000万元を超えず、最終的に清算に至った。同様に「インファユーヘン定投3カ月保有ファンド」も、運用成績が振るわず、設立以来残高がほぼ横ばいのまま8月9日に清算手続きへ移行した。
“ミニファンド化”が進む背景として、A株市場の不安定な値動きによる「稼ぐ力」の低下だけでなく、医薬や新エネルギーなどテーマ型商品ブームの一巡も影響している。さらに、一部の運用会社では市場への“占有”や“試験的な設定”を目的に発起式ファンドを立ち上げた結果、投資調査や運用体制の整備が不十分なまま運用が始まり、規模拡大につながらないケースも少なくない。
専門家は「発起式ファンドは、運用会社自ら資金を拠出することで投資家との利益共有を図るという設計自体は評価できる。ただし、運用体制と投資調査能力が伴わなければ“共倒れ”になりかねない。今後はファンドマネージャーの実績や会社全体の投資リサーチ力が、より厳しく問われることになる」と指摘している。
低コストで設立できる一方、規模に達しなければ自動的に清算されるという二面性を持つ発起式ファンドにとって、今後3年間はまさに“生き残りの選別期間”となりそうだ。
(中国経済新聞)
