中国の半導体業界で波紋が広がっている。10月18日、中国メディアの報道によると、安世半導体(Nexperia)のオランダ本社が突如、中国区(中国法人)の全社員に対する給与支払いを停止し、同時にシステム権限も全面的に中断したことが明らかになった。
関係者によれば、安世半導体中国区は17日付で中国国内の取引先に通知書を送付し、「本社から中国区社員への労働報酬の支払いが停止された」と説明したという。社内ではすでに給与未払いが発生しており、一部社員からも「賃金の支給が止まっている」との証言が出ている。

事態の背景には、オランダ政府による強制的な経営権接収がある。10月1日、オランダ政府は中国・聞泰科技(Wingtech Technology)の全額出資子会社である安世半導体を「国家安全上の懸念」を理由に接収。これに対し、中国商務部は対抗措置として安世半導体に対する輸出規制を発動し、中国で生産される製品の輸出を禁止した。
今回の給与停止およびシステム遮断は、こうした対立の延長線上にあるとみられる。中国の業界関係者は「オランダ側は中国の措置を解除させるために圧力をかけている」と分析する。
一方、親会社の聞泰科技は17日夜にコメントを発表し、「確かに今朝、中国チームのアカウントが封鎖された。理由は明らかでないが、現在一部は回復している」と説明。その上で、「ヨーロッパ側がシステムや資金を完全に遮断する可能性を考慮し、中国区は自立的な緊急対応を進めている。国内サプライチェーンを再構築し、中国市場への供給を確保する」と強調した。
安世半導体はスマートフォン、車載機器などに広く使用されるパワー半導体の大手メーカーで、聞泰科技が2019年に完全子会社化。今回の経営権騒動は、中国企業の海外M&Aや先端技術の国際分断に新たな緊張をもたらしている。
中欧間の技術・サプライチェーンをめぐる対立が深まる中、安世半導体の行方は、中国半導体産業の今後を占う試金石となりそうだ。
(中国経済新聞)