中国出身の世界的アーティスト・蔡国強(さい こくきょう)氏が、アウトドアブランド「アークテリクス(始祖鳥)」と協力し、チベット・ヒマラヤ山脈のチャチョンガンリで大規模な花火ショーを実施したことが波紋を呼んでいる。
9月19日夕方に行われた同イベントは、「山脈の稜線に沿って火薬を点火し、炎が駆け上がることで“昇り龍”の景観を生み出す」という演出で、雄大な自然を舞台にした壮大な試みだった。しかし、繊細な自然環境を抱えるヒマラヤ地域での開催という点から、環境への影響を懸念する声が広がった。

主催側は「使用した花火は生分解性素材であり、汚染物質の排出も国際基準を満たしている」と説明。彩色に用いた粉も2022年北京冬季五輪で成分検査を経たもので、米国や日本、欧州などでの検証実績もあると強調した。また、燃焼後は山体や渓流の残留物を回収し、植生の修復作業を行ったほか、事前に牧畜を安全な距離へ移動させ、小動物も避難させる措置をとったという。
それでもSNSなどでは「脆弱な自然環境に人為的な影響を及ぼすべきではない」と批判が続出。21日にはチベット自治区日喀則市(リカーザー)が「調査チームを現地に派遣し、状況を確認する」と発表した。
蔡国強氏は1957年に福建省泉州で生まれ、上海戯劇学院で舞台美術を学んだ後、1986年から約9年間日本に滞在。1995年にニューヨークへ拠点を移し、火薬を用いた爆破芸術や大規模インスタレーションで国際的に知られる。2008年北京五輪開会式の「大足跡」花火演出を手掛けたことでも有名だ。
今回の騒動を受け、蔡氏は21日に自身の公式SNSを通じて「多くのご批判とご指摘を誠実に受け止める。配慮が至らなかった点が多々あり、深くお詫び申し上げる」とコメントした。
芸術表現と環境保護の両立をめぐり、改めて議論を呼んでいる。
(中国経済新聞)