上海市内で、中国の新興EVメーカー・理想汽車(Li Auto)の大型電動ミニバン「MEGA」が走行中に出火し、わずか10秒ほどで車体全体が炎に包まれる事故が発生した。車両は全焼し、車内の財物もすべて焼失したが、幸いにも乗員にけがはなかった。
事故後、インターネット上ではさまざまな憶測が飛び交った。ある報道では「事故当日の午後、車両がすでに故障コードを出し、理想汽車側がレッカー搬送を手配していたが、車主が修理に出さなかった」との情報が流れた。しかし、車主は弁護士を通じて「事故当日に故障やレッカー要請があった」という内容を全面的に否定し、「不実の内容だ」との声明を発表した。

このため、「出火前にバッテリー警告・異常信号は出ていたのか」「その情報は車主に正しく伝えられたのか」という点が大きな関心を集めている。
第一財経(CBN)の取材に応じた複数の動力電池メーカーや自動車メーカーの技術者によると、EV火災の約9割はバッテリーに起因しており、とりわけ「熱暴走」が主な原因だという。その被害を最小化するために重要な役割を果たすのが、いわゆる「バッテリーの保護者」と呼ばれる「バッテリー管理システム(BMS:Battery Management System)」だ。
ある自動車メーカーの電池開発部門の技術者は次のように説明する。
「BMSの主な役割は、電池の温度や各セルの電圧などをリアルタイムで監視し、安全な動作範囲を超えた場合には警告や異常信号を出すことです。この信号は電池メーカーや自動車メーカーに送られ、必要に応じてメーカー側がユーザーへ注意喚起を行います。」
ただし、BMSの仕様はメーカーごとに異なるという。
「車両によっては、メーターやセンターディスプレイに明確な警告アイコンが表示されるものもありますが、そうでない車種も少なくありません。その場合、車主が異常に気づかず、メーカーからの通知を待つしかないケースもあります」と同技術者は指摘する。
理想汽車の「MEGA」が出火前に異常信号を検知していたのか、またそれが車主に伝えられていたのか――同社は現時点で正式なコメントを出していない。事故の真相は依然として不明のままであり、電動車両の安全監視体制に対する社会の注目が一段と高まっている。
(中国経済新聞)
