プリント配線板(PCB)産業が、人工知能(AI)ブームの追い風を受けて大きな転換期を迎えている。10月28日夜、滬電股份(Huazheng Circuits)、生益電子(Shengyi Electronics)など主要PCBメーカーが2025年第3四半期決算を発表した。決算によると、滬電股份は売上高501億9,000万元(約1兆500億円、前年同期比39.9%増)、純利益103億5,000万元(約2,160億円、同46.3%増)を計上。生益電子も売上高306億元(約6,380億円、同153.7%増)、純利益58億4,000万元(約1,220億円、同545.9%増)と大幅な伸びを示した。
滬電股份は報告書の中で、「高速演算サーバーやAIなど新しい計算領域における構造的需要の高まりが売上増加を支えた」と説明している。
このほか、大族数控(Han’s CNC)、勝宏科技(Victory Giant Technology)など産業チェーン上の主要企業も好調で、3四半期連続で売上・利益ともに二桁成長を達成。AIサーバーやAI演算向けの高性能PCB需要が拡大する中、業界全体が新たな成長局面を迎えている。
金融情報サービスのWindによると、国内PCB製造企業47社の平均株価収益率(PER・TTM)は82.33倍に達し、A株市場全体の約4倍に相当する。2025年5月時点の平均PERは37.11倍だったことから、半年でほぼ倍増した計算だ。投資家の間では「PCB業界は爆発的成長の直前にある」との見方が強まっている。

実際、主要企業の決算はその期待を裏付ける内容となった。勝宏科技は第3四半期に売上高508億6,000万元(約1兆620億円、同期比78.9%増)、純利益110億2,000万元(約2,290億円、同260.5%増)を達成。大族数控も売上高152億1,000万元(約3,160億円、同95.2%増)、純利益22億8,000万元(約470億円、同281.9%増)と急伸し、非経常項目除き純利益は前年同期比406%増と記録的な伸びを見せた。
PCBは「電子製品の母」と呼ばれ、銅張積層板(CCL)や銅箔、ガラス繊維布、樹脂などから構成される。AI演算需要の急増を受け、PCB産業もAIブームの「特急列車」に乗っている。
大族数控は、「AI向け高多層板や高密度配線板(HDI)市場の拡大に伴い、高付加価値設備への需要が急増している」と指摘。同社はAI用PCB製造向けの一括ソリューションを提供し、短納期・大量納入のニーズに応えることで主要顧客から高評価を得ている。
生益電子も「高付加価値製品の比率上昇により、中・高端市場での競争優位を維持できた」と説明している。
高端化・技術革新が業界のカギに! AI技術の進展により、PCBの高層化・高精細化・高信頼化が求められているが、国内の高端PCB供給力は依然として需要に追いついていない。供給ギャップが大手企業の新たな成長余地になるとの見方が強い。
調査会社TrendForceによれば、2023年の世界AIサーバー出荷台数は約120万台だったが、2025年には210万台を突破する見込み。Prismarkのデータでは、AI/HPCサーバー向けPCB市場(パッケージ基板を除く)は2023年の約8億ドルから2028年には31億7,000万ドルに拡大し、年平均成長率(CAGR)は32.5%に達すると予測されている。
主要企業の研究開発投資も急速に拡大している。2025年前三四半期のデータでは、滬電股份のR&D投資は7億9,200万元(前年同期比37.3%増)、生益電子は1億3,200万元(同59.7%増)。勝宏科技は6億800万元(同84.4%増)、大族数控は2億5,400万元(同45.2%増)と大幅な増加を記録した。 AIが牽引するPCB産業は、より高層・高密度・高信頼性を求める方向へと進化しており、各社は「AI時代の電子基盤」づくりをめぐって激しい開発競争を繰り広げている。
(中国経済新聞)
