中国商務部、現代小売体系の構築を本格化

2025/12/12 16:30

中国の小売業が大きな転換点を迎えている。12月9日から10日にかけて北京で開催された全国小売業イノベーション発展会議では、商務部が「現代小売体系」構築に向けた具体的な方向性を示した。会議では、商圏配置の最適化、高品質な商品供給、多様な業態の育成、スマート化の推進、グリーン化の加速、公正な競争環境の整備といった重点分野が示され、変革期にある小売産業が持続的に成長するために解決すべき課題が整理された。

■ 「第14次五カ年計画」期、小売の拡大が消費を牽引

各種データからは、ここ数年、小売業が内需拡大を支える柱となってきたことが読み取れる。2024年の社会消費品小売総額は前年比3.5%増と、堅調な回復基調が続いた。さらに2025年1〜9月の一定規模以上の小売企業の売上を見ると、コンビニエンスストア(6.4%増)、スーパー(4.4%増)、百貨店(0.9%増)、専門店(4.8%増)、ブランド専門店(1.5%増)と、業態ごとに差はあるものの、いずれも前年を上回っている。

また、商務部が国務院新聞弁公室の記者会見で示したデータによれば、「第14次五カ年計画」期間に流通分野の企業規模は大きく拡大し、2024年の卸売・小売業の付加価値は13.8兆元に達した。これは製造業に次ぐ規模で、「第13次五カ年計画」末から約40%の増加となっている。GDPに占める割合も1割を超え過去最高となり、1億3,500万人を雇用する巨大基盤としての役割も改めて確認された。

■ 課題:商業施設の配置、供給と需要のミスマッチ、オンラインとオフラインの再均衡

一方で、急成長の裏側では、構造的な課題が残っている。とくに、店舗網の地域偏在や商圏配置の不十分さ、消費ニーズの変化に対する供給力の遅れ、オンライン販売と実店舗販売のバランス改善といったポイントが、今後の成長を左右する重要課題として挙げられた。

デジタル化の急速な進展によりオンライン小売が拡大する一方、実店舗は「体験」「サービス」「即時性」を軸にその価値が再評価されつつある。こうした状況のなか、両者が補完し合い、より高度に連動する現代的小売インフラをどのように整備するかが、政策と産業界の共通課題となっている。

■ 小売産業は「調整期」へ——求められる質への転換

会議では、小売産業が現在「変革と調整の時期」にあるとの認識も共有された。これからの焦点は、量的拡大よりも付加価値と効率性を高める質的な成長へと移る。

今後は、デジタル技術を活用したサプライチェーンの高度化、地域特性に応じた業態配置の最適化、低炭素型の物流・店舗づくり、公正競争環境の整備と企業の健全な発展といった分野で、政策支援と企業イノベーションを同時に進める必要がある。

中国の小売業はすでに国内最大規模の市場と雇用を抱える産業へと成長した。次のステージでは、消費構造の変化に対応しつつ、スマート化、グリーン化、多業態化を軸に、より成熟した市場モデルを築けるかが問われている。

(中国経済新聞)