除夕に電撃発表――Alibaba Cloud、新世代大規模モデル「Qwen3.5-Plus」を公開・オープンソース化

2026/02/17 16:00

2月16日の除夕、祝祭の熱気が広がるなか、阿里巴巴集団(Alibaba Group)傘下のクラウド事業会社である阿里雲(Alibaba Cloud)は、新世代大規模言語モデル「千問(Qwen)3.5-Plus」を発表し、同時にオープンソースとして公開した。春節期間中の発表は異例であり、国内外のAI業界に強いインパクトを与えている。

同モデルは単なるバージョン更新ではなく、基盤アーキテクチャの全面的な刷新を伴う世代交代型のアップグレードと位置付けられる。性能面ではGemini 3 Proに匹敵する水準に到達したとされ、オープンソースモデルとしては世界最上位クラスに入ると評価されている。

3970億パラメータ規模、効率性を大幅に向上

Qwen3.5-Plusの総パラメータ数は3970億に達する。一方で、独自の最適化設計により、推論時に活性化されるパラメータは170億に抑制されている。この設計により、1兆パラメータ級とされる上位モデル「Qwen3-Max」を上回る場面も確認されたという。

あわせて、

・デプロイ時のGPUメモリ使用量を約60%削減
・最大推論スループットを最大19倍まで向上
・API価格を100万トークン当たり0.8元に設定(Gemini 3 Proの約18分の1)

といった効率化を実現した。高性能と低コストの両立を前面に打ち出し、AI活用の裾野拡大を狙う構えである。

主要ベンチマークで高水準の評価

Qwen3.5-Plusは、複数の国際的評価指標において高いスコアを記録している。

・Agentツール利用(BFCL V4):72.9点、GPT-5.2およびGemini 3 Proを上回る
・Agentコード生成(SWE-bench Verified):76.4点、Gemini 3 Proを僅差で上回る
・動画理解(Video-MME):87.5点、GPT-5.2およびClaude Opus 4.5を上回る
・具身知能推論(ERQA):67.5点、GPT-5.2、Claude Opus 4.5を大幅に上回る

特にAI Coding分野は、これまで中国勢が相対的に弱いと指摘されてきた領域であり、今回の結果はその遅れを縮小する動きと受け止められている。

同モデルは最長2時間の動画を直接入力できるほか、手描きのUIスケッチから実用的なフロントエンドコードを生成する機能も備える。映像理解とプログラム生成を横断的に統合する能力が強化された点が特徴である。

マルチエージェント時代を見据えた布石

近年はマルチエージェント(Multi-Agent)型のAI活用が注目を集めている。OpenClaw創業者のPeter SteinbergerがOpenAIに参画したことも象徴的な動きとされる。エージェント機能の高度化は、今後の競争力を左右する重要要素となる見通しである。

AIGCおよび具身知能(Embodied AI)の実装拡大が進むなか、Qwen3.5-Plusはこれらの応用分野において高い性能を示し、実用展開を強く意識した設計となっている。

アーキテクチャ革新と研究成果の実装

技術面では、Transformer系アーキテクチャを基盤としながら、線形注意機構とスパース混合専門家(MoE)構造を融合。さらに、自社開発のゲーティング技術を導入している。この技術は2025年のNeurIPSにおいて最優秀論文賞を受賞した研究成果を基礎としており、それを大規模商用モデルへと実装した点が注目される。3970億パラメータ規模でありながら170億のみを活性化する効率設計は、その工学的応用の成果とされる。

春節という象徴的なタイミングでの公開は、技術力とコスト競争力の両面で存在感を示す狙いがあるとみられる。AI競争がモデル単体の規模競争から、実装効率と応用力を含む総合戦へと移行するなか、阿里雲の今回の発表はその潮流を映す一例となっている。

(中国経済新聞)