春節特番に賭ける巨額投資――ロボット4社競演、IPOラッシュ前夜の攻防

2026/02/17 18:30

昨年の春節特番で、宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)のロボットが披露した秧歌(ヤンコ)踊りは、大きな話題を呼び、同社の知名度を一気に押し上げた。今年の春節特番は、もはや単なる出演の場ではない。ロボット企業にとっては、資本市場を見据えた“スーパーPR舞台”となっている。

今年は、宇樹科技のほか、魔法原子(マジックラボ・ロボティクス)、銀河通用(ギャラクシー・ジェネラル〈Galbot〉)、松延動力(ソンヤン・ダイナミクス)の4社がそろって出演した。そのうち半数は長江デルタ地域に拠点を置く。複数のメディアは「出演を獲得するため、各社が多額の資金を投じた」と伝えている。

現在、中国の主要ヒューマノイドロボット企業の年間売上高は数億元(数十億~200億円規模)とされる。米調査会社IDCの統計によれば、2025年の世界ヒューマノイドロボット販売額は約4億4,000万米ドル(約66億円、1ドル=150円換算)にとどまる。市場規模がまだ発展途上にあるなか、春節特番へのマーケティング投資は決して小さくない。それでも各社が巨額を投じるのは、将来の資金調達や企業価値向上につながると判断しているからだ。

4社の横顔――量産と上場を見据えて

宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)

2016年8月設立。創業者は王興興氏。民生向け・産業向けの高性能四足ロボットやヒューマノイドロボット、精密マニピュレーターの開発・製造・販売を手がける。

2024年の売上高は10億元超(約200億円超)。2025年のヒューマノイド出荷台数は5,500台超、量産ラインからの出荷は6,500台超に達した。2025年11月にはA株市場上場に向けた上場指導を完了し、「A株ヒューマノイド第一号」への期待が高まっている。

魔法原子(マジックラボ・ロボティクス)

2024年1月設立。汎用ロボットとエンボディドAI(身体性を備えた人工知能)の研究開発および応用に特化する。従業員の7割以上が研究開発人材。ヒューマノイドや四足ロボットを展開し、産業・商業・家庭向けに応用を広げている。上場に向けた動きが市場で取り沙汰されている。

銀河通用(ギャラクシー・ジェネラル/Galbot)

2023年5月設立。商業、産業、医療分野で汎用ロボットを展開。2025年12月に3億米ドル(約450億円)を調達し、企業評価額は30億米ドル(約4,500億円)に達した。株式会社化を完了しており、香港市場への上場準備との観測もあるが、同社はこれを否定している。

松延動力(ソンヤン・ダイナミクス)

2023年9月設立。ヒューマノイドロボットの研究開発・製造を主軸とし、約20万円の低価格モデルで差別化を図る。創業メンバーは清華大学や中国科学院の出身者。今年2月に株式会社化を完了した。

「数億人への露出」――資本市場を意識した戦略

春節特番は例年、数億人が視聴する国民的番組である。ロボット企業にとっては、ブランド認知度の飛躍的向上と企業価値の引き上げを狙う絶好の機会だ。とりわけ2026年前後は、身体性AI関連企業の上場ラッシュが見込まれている。春節特番への出演は、投資家に対する強力なアピール材料となる。

宇树科技はすでに上場指導を終えており、ほかにも複数の企業が上場準備を進めている。市場では「春節特番はロボット企業にとってのスーパーIR舞台」との見方が広がっている。

出荷は急増、しかし用途はなお限定的

IDCによれば、2025年の世界ヒューマノイドロボット出荷台数は約1万8,000台(前年比約508%増)、販売額は約4億4,000万米ドル(約66億円)。累計受注は3万5,000台超とされ、量産体制への移行が進んでいる。

宇樹科技は2025年に5,500台超を出荷。国内大手も数千台規模に達し、年産1万台体制を目指す企業もある。一部では大口受注も成立し、量産段階に入った。

もっとも、商用利用の範囲はまだ広くない。証券会社の分析によれば、現時点での主な導入先は政府部門、データ収集用途、生活サービス分野に限られている。製造業など本格的な産業現場への浸透はこれからが本番だ。

一方、瑞銀集団(UBSグループ)は最新レポートで「ヒューマノイドは概念実証段階から産業応用段階へ急速に移行している」と指摘。2026年の世界需要は3万台に達すると予測している。

舞台から工場へ――2026年は転換点となるか

春節特番の華やかな舞台は、ロボット産業の現在地を映し出している。すなわち、技術デモ中心の段階から量産競争へ、研究開発主導から資本市場主導へという転換だ。企業にとって春節特番は一夜限りのショーではない。上場、企業評価、そして将来の受注へとつながる前哨戦である。2026年は、ヒューマノイドロボットが本格的な商用化の分岐点を迎える年となる可能性が高い。舞台で踊ったロボットが、次に立つのは工場や現場のフロアかもしれない。

今年の巨額投資が先行投資として実を結ぶのか。それとも過熱競争の象徴となるのか。その答えは、これからの市場の現実が示すことになる。

(中国経済新聞)