中国国内初、地下駐車場で電気自動車が火災 複数台が全焼──保険は適用されるのか

2025/12/9 18:30

12月7日、山東省済南市の大型住宅・商業複合施設「恒大城」の地下駐車場で車両火災が発生し、電気自動車(EV)が出火元となった可能性が指摘されている。火は瞬く間に周囲へ燃え移り、数台の車が焼け落ちて“骨格”だけの状態になった。ネット上の情報によれば焼損車両は6台、さらに数十台が煙や熱で損傷したとみられる(注:最終的な台数は公式発表を待つ)。

人的被害は出なかったものの、財産的な損失は大きく、「地下駐車場でEVが起火した際のリスク」が改めて注目されている。

■ 大規模被害を免れた背景――都市型複合施設ならではの設備

今回火災が発生した恒大城は、住宅・商業施設・会所などを備えた大規模複合開発で、豊富な資金を背景に消防設備や管理体制が充実している。

そのため、警報システムが迅速に作動し、初期消火もすぐに行われたことで、火勢の拡大が抑えられた。

しかし、同様の火災が消防設備の不十分な施設で発生すれば、被害がさらに拡大する可能性は十分にある。

■ 韓国で起きた“悲劇”との比較

2024年8月、韓国のある集合住宅の地下駐車場でもEV火災が発生した。

当時は、①スプリンクラーが火を抑えきれなかった、②地下空間が狭く、消防車が進入できなかったといった状況が重なり、最終的に約140台が焼損する大事故となった。

損害額は車両保険の補償上限をはるかに超え、ある車主は破産の危機に追い込まれたとも報じられた。最終的には火元となった車種のメーカーが「支援」という形で救済し、破産は避けられた。

済南での火災は、中国国内ではほぼ“初”となる地下駐車場での大規模EV火災とみられ、韓国の事例を踏まえた不安も広がっている。

■ 車両保険は支払われるのか? 鍵を握る「原因の特定」

中国では、EV火災に対する保険の扱いが近年しばしば議論されてきた。2024年には、中国人寿財険湖南省分公司が《中国保険業協会 新エネルギー自動車保険示範条款》に基づき、次の点を説明している。

●保険金支払いの対象外となる損失

自然磨損/バッテリーの劣化/朽ち、腐食/故障/車両本体の品質欠陥

つまり、自然発火(自燃)であっても、原因が品質問題や部品故障と認定されれば、保険金が支払われない可能性があるということだ。

今回の済南の事故でも、起火が外部要因なのか、充電設備に問題があったのか、車両そのものの欠陥なのかといった“原因の特定”が、補償の可否を左右する。焼損車両が多い場合、保険会社による事故調査には一定の時間がかかることが予想される。

(中国経済新聞)