シーイン、香港上場へ向け本社の中国回帰を検討 ― 追い込まれる「グローバル企業」戦略

2025/08/20 15:30

ファストファッション大手のShein(シーイン)が、現在拠点を置くシンガポールから本社を中国本土に戻す方針を検討していることが明らかとなった。複数の関係者によれば、同社は中国企業としての体制を整えた上で、香港証券取引所での上場を円滑に進めたい考えだ。

シーインは2021年に本社をシンガポールに移した後、企業イメージを「グローバル企業」へと転換。IPOについても公式には多くを語ってこなかった。しかし今年3月、エグゼクティブチェアマンの唐偉氏(Donald Tang)は改めて上場計画を推進する姿勢を強調していた。

ニューヨークとロンドンでの上場が相次いで頓挫したことで、香港市場が事実上唯一の選択肢となりつつある。すでに水面下で申請書類を提出しているものの、上場には中国証券監督管理委員会(CSRC)の承認が不可欠だ。中国関連の事業を持つ企業は登記地が海外であっても、CSRCの審査を受ける必要があるとされている。

こうした動きを受け、資本市場ではサプライチェーン関連銘柄が反応。シーイン向けに物流や検品を手掛ける企業の株価が一時急騰する場面も見られた。

もっとも、本社回帰は「グローバル企業」としての戦略を見直すことを意味する。これまで同社は中国色の薄い企業像を打ち出してきたが、IPO実現のためにはこの方針を転換せざるを得ない。

背景には、急速な企業価値の目減りもある。ピーク時には1,000億ドルに達したシーインの評価額は、この3年間で約300億ドルへと大きく縮小。主要投資家であるIDGキャピタルや紅杉中国などからは、早期上場とバリュエーションの引き下げを求める声が高まっている。

さらに、欧米市場での競争激化や規制強化も同社を追い込んでいる。米国ではTemu(拼多多)の台頭に加え、「少額免税枠」の見直しにより小口直送モデルが打撃を受けた。2023年には強制労働の疑惑をめぐり米議会の圧力を受け、ニューヨーク上場を断念している。

現在は香港市場への上場を目指して再出発した格好だ。仮に上場が実現すれば、低迷が続く香港IPO市場にとっても久しぶりの大型案件となる可能性が高い。

「海外回避」か、「中国回帰」か――シーインは岐路に立たされている。

(中国経済新聞)