2025年、中国のアニメ業界では話題作が続々と登場し、各動画配信プラットフォームを舞台に激しい競争が繰り広げられている。今年から配信が始まった主な新作を中心に、その魅力と特徴を紹介したい。
中国古典文学の名作を現代アニメとして大胆に再解釈したのが『在下“英台”』だ。本作はKIO Studioと腾讯(テンセント)系スタジオによる共同制作で、2025年7月27日より腾讯视频、極光TV、芒果TVなどで同時配信がスタートした。舞台は古代中国の学府。梁山伯と祝英台という中国を代表する悲恋伝説を原案に、学園青春劇として再構築。伝統的な物語にコミカルな演出や軽快なテンポを加え、若年層からも支持を集めている。

ファンタジー・修仙ジャンルで注目なのは『神国之上』だ。原作は同名の人気オンライン小説。2025年6月14日より愛奇艺にて配信が始まり、高能工作室や中影年年が制作に参加した。主人公は飛昇(転生)に失敗した若き修道士・寧長久。師匠によって前世の執念を断ち切られた彼は、魂だけが12年前に戻り、かつて婚約していた趙国女皇・趙襄児と再会する。二人が互いに支え合いながら修行を重ね、やがて千年にわたる陰謀の核心に迫っていくという重厚な物語が展開される。

同じく愛奇芸が制作を手掛けた『余烬行者』は、英雄に憧れる少年の成長を描いたアクション作品だ。幼い頃に“地獄猎兵”に命を救われた端木夜雨は、自らも同じ組織に入ることを目指し、余烬城へ向かう。しかし到着と同時に大規模な事件に巻き込まれ、やがて一人の小さな行動が大きな戦火を呼ぶことになる――というダークで骨太なストーリーが特徴だ。2025年6月12日より配信が開始された。

一方、『魔天記』は亡命者として生きてきた少年・柳鳴が、人魔が共存する修仙世界で力を得ていく様子を描いた王道の冒険譚だ。2025年4月24日より順次配信され、愛奇艺による新作アニメラインナップの中でも“重点プロジェクト”として位置づけられている。人間・妖・鬼が入り乱れる混沌とした世界観と、一度は命を追われた少年が伝説級の存在にのし上がっていく“逆転の美学”が多くのファンを魅了している。

最後に、今年6月2日よりテンセントビデオ配信が始まった『大猿魂』にも触れておきたい。本作は「悟空前伝」として制作された作品で、龍神万相宇宙が展開する世界観の一部を成す。群魔が跋扈する乱世において不思議な霊石から誕生した“灵明石猴”が、やがて孫悟空として覚醒していくまでを描く。神話的な重厚さとダイナミックなアクション演出は、従来の中国アニメを一段引き上げたと言われている。

2025年の中国アニメは、古典の再解釈から完全オリジナルの冒険譚まで、ジャンルの幅を大きく広げている。特に“修仙”“神話再構築”といった中国文化の根幹を成すテーマに、若い視聴者にも刺さる現代的な語り口を融合させている点が特徴と言える。今後もこの流れはさらに加速する見通しであり、中国アニメの進化から目が離せない。
(中国経済新聞)