中国教育部と財政省はこのほど、2025年の「銀齢講学計画」に関する実施通知を共同で発布した。国家の「銀齢教師行動計画」の全体部署に基づき、今年は7000人の銀齢講学教師を募集する。優秀な退職教師の指導・模範的役割を活かし、農村学校の教育水準と教育管理能力を向上させ、都市部と農村部の教育の質的均衡発展を推進する狙いだ。
この計画は、退職したベテラン教師を農村部や辺鄙な地域の学校に派遣し、若手教師の育成や授業の質向上を図るものだ。近年、中国では都市部の教育資源が集中する一方で、農村部の学校では教師不足が深刻化しており、このような「銀齢」活用が教育格差是正の鍵と位置づけられている。通知によると、講学教師は現役時代の退職待遇を維持したまま活動でき、月々の経費として労働補助金、交通・出張費用、事故保険料などが支給される。

募集対象となる銀齢教師の一般条件は、退職した小学校・中学校の校長、教研員、特級教師、高級教師など。年齢は原則65歳(含む)以下で、政治的に信頼でき、師徳が高く、勤労熱心で身体が健康、業務に精通していることが求められる。主な業務はクラス担任や授業担当が中心だが、学校のニーズに応じて、授業聴講・評価、公開授業の実施、研究授業の組織、专题講座の開催なども行う。若手教師の指導、学校の教育管理支援、教研活動の推進を通じて、模範的・波及効果を発揮する。
連日来、湖北省、四川省、吉林省、安徽省、浙江省、甘粛省など複数の地方メディアが相次いで募集を呼びかけた。特に浙江省と甘粛省では、具体的な募集要項と連絡先情報を公表し、積極的な参加を促している。例えば、浙江省教育庁の発表では、応募者はオンライン登録が可能で、面接や健康診断を経て選抜されるプロセスが明記された。甘粛省では、辺鄙な山間部学校を優先的に支援する方針を示し、教師の交通支援を強化するとしている。
中国教育部の関係者によると、2024年の同計画では約5000人の銀齢教師が派遣され、農村学校の授業満足度が平均15%向上した実績があるという。今年の7000人規模は過去最大で、全国の農村教育の「質的飛躍」を後押しするものと期待されている。習近平国家主席が推進する「共同富裕」政策の一環として、教育分野での資源再配分が加速しており、この計画は都市部の退職教師の「第二の人生」を活かした好例だ。
一方、課題も指摘されている。高齢教師の健康管理や地方への適応が懸念され、通知では「講学期間は原則1学期間(半年)とし、柔軟な配置」を強調。参加教師からは「故郷の農村を支えたい」という声が多く、志願者の熱意が計画の成功を支えている。
この「銀齢講学計画」は、中国の教育改革の象徴として注目を集めている。退職者の知恵を次世代に継承する取り組みは、日本をはじめとするアジア諸国にとっても示唆に富む。
(中国経済新聞)