中国政府が発表した「第15次5カ年計画(2026~2030年)」は、不動産業界にとって歴史的な転換点となった。これまでGDP成長と投資にべったりくっついていた「経済の柱」だった不動産が、突然「共同富裕」の枠組みに組み込まれ、教育・医療・雇用といった民生項目と肩を並べる存在になったのだ。
これは単なる表現の変更ではない。
「家は住むためのものであり、投機で儲ける道具ではない」、習近平主席のこの一文が示すように、今後の住宅は生活必需品として位置づけられ、価格上昇を前提とした資産運用ゲームは公式に終了した。
逆に言えば、これまで高値で買わされた人は損をしたが、これから買う人は「質の良い住宅を安く手に入れられる」時代が来るということだ。
なぜここまで劇的に変わったのか?
答えはシンプルだ。
「土地財政+不動産バブルで経済を回す」モデルが、完全に限界を迎えたからである。
過去30年間、中国の不動産ブームを支えた「三つのエンジン」は以下の通りだった:
- 輸出で稼いだ外貨
- 土地売却+インフラ投資
- 農民の都市流入・若者の結婚剛需・低レバレッジ家計。
しかし2025年現在、これら全てが同時に崩壊している。
都市化率はすでに70%に達し、農村から流入する人口はほぼ枯渇。結婚件数は激減、人口はマイナス成長に転じ、住宅剛需が消滅している。 家計の負債比率は60.4%まで急上昇(先進国並み)、もう借金で家を買えない 。
その結果、 全国の平均住宅価格はすでに30%下落、新築物件は売れず、販売現場は悲鳴を上げている。市場は一夜にして「売手市場」から「買手市場」へと逆転し、開発業者は値下げ競争に追い込まれている。
「第15次5カ年計画」は分水嶺である。
この計画は、2025年を境に「不動産はもう成長エンジンではない」と宣言したに等しい。
今後政府が注力するのは:
公営住宅・保障性住宅の大量供給 、老朽化した住宅の建て替え(都市更新) 、賃貸市場の整備と権利保護 。
つまり、「高価だけど質が悪い」住宅は淘汰され、「手頃な価格で高品質」な住宅だけが生き残る時代が始まる。
