中国、上場証券会社42社の純利益、前年同期比6割増 市場回復が追い風に

2025/11/7 08:30

2025年のA株市場の回復を背景に、中国の証券業界が好調だ。金融情報会社Windの集計によると、今年1~9月期(第3四半期まで)に上場証券会社42社の合計営業収入は4,292億5,200万元(約9兆6,400億円)、親会社株主に帰属する純利益は1,830億9,000万元(約4兆1,100億円)に達し、ともに前年同期比で40%を超える伸びを示した。

営業収入が100億元(約2,250億円)を超えた企業は11社、純利益が100億元を超えた企業は5社にのぼる。市場の上昇基調を受け、証券各社のブローカー業務および自己勘定取引(いわゆる自営業務)が業績をけん引した。

■ 大手3社が依然トップを維持

業界トップの座を占めるのは依然として中信証券、国泰海通証券(旧・国泰君安と海通証券の統合会社)、華泰証券の3社だ。

中信証券は営業収入558億1,500万元(約1兆2,550億円)、国泰海通は458億9,200万元(約1兆300億円)、華泰証券は271億2,900万元(約6,090億円)を計上。これに広発証券、中国銀河証券、中金公司などを加えた計11社が「営業収入100億元クラブ」に入った。

純利益でも中信証券(231億5,900万元=約5,200億円)、国泰海通(220億7,400万元=約4,940億円)、華泰証券(127億3,300万元=約2,850億円)が上位を占めた。さらに中国銀河証券、広発証券も純利益が100億元(約2,250億円)を超えた。

■ 業績急伸の背景は再編と市場回復

上場50社のうち、44社が営業収入を増加させ、すべての企業で純利益が前年を上回った。このうち34社は純利益が50%以上増加、15社は倍増した。

特に注目されるのは再編を経た2社――国聯民生証券と国泰海通証券だ。国聯民生は営業収入60億3,800万元(約1,360億円、前年同期比+201%)、純利益17億6,300万元(約400億円、+345%)を記録。国泰海通も営業収入・純利益ともに倍増した。両社とも合併効果による事業規模の拡大や、投資収益・手数料収入の増加を業績改善の要因としている。

また、中堅証券では華西証券(純利益10億5,900万元=約240億円、+316%)、中原証券(3億8,900万元=約90億円、+138%)、天風証券(1億5,300万元=約35億円、+128%)などの好調が目立った。

■ ブローカー業務・自己勘定取引が業績を押し上げ

上証総合指数は年初来で約15.8%上昇し、4,000ポイント台を回復。市場の活況が証券各社の手数料収入と投資収益を押し上げた。

ブローカー業務では、中信証券と国泰海通の手数料収入がともに100億元を突破(それぞれ109億3,900万元=約2,460億円、108億1,400万元=約2,430億円)。前年同期比でそれぞれ+52.9%、+142.8%と大幅に伸びた。

自己勘定取引(自営業務)も業績に大きく寄与した。中信証券は投資関連収益が316億300万元(約7,100億円)に達し、全収入の約57%を占めた。国泰海通、中国銀河、申万宏源証券なども100億元(約2,250億円)超を記録。長江証券は同収入が前年同期比+289%の30億4,400万元(約690億円)と急増した。

一方、華林証券は同収入が2億200万元(約46億円)と4割減少し、中原証券、華泰証券、国海証券も10%以上の減収となった。

■ 市場環境改善で業界の景気感上昇へ

市場回復を追い風に、証券セクターは「量・利ともに拡大」の局面を迎えている。アナリストの多くは、業界全体の収益性が今後も改善基調を維持するとみている。

開源証券は、「第3四半期は債券市場が軟調だった一方、株式投資部門が強い弾力性を示した。今後は公募ファンド、海外事業、投資銀行業務、デリバティブ取引などが新たな成長源となり、トップ証券会社のROE拡大とともに、セクター全体の低バリュエーションが投資機会を生む」と指摘。

東呉証券も、「株式取引量と信用取引残高の増加がブローカー収益を押し上げ、株式市場の上昇が投資収益を拡大させた」と分析する。10月末時点で証券業界の平均PBR(株価純資産倍率)は1.3倍と依然として低水準にあり、「政策支援とともに有力証券の成長余地は大きい」としている。

東海証券は、「2025年第3四半期のA株市場の平均日次売買代金は2.1兆元(約47兆2,000億円)と前年の3倍に達し、信用取引残高も約2.4兆元(約54兆円)に安定。市場活況が証券各社の収益基盤を大きく押し上げた」と総括した。

(中国経済新聞)