米コーヒーチェーン大手スターバックスは現地時間11月3日、中国事業の過半数株式を香港拠点の投資会社・博裕投資(Boyu Capital)に売却したと発表した。取引額は最大40億ドル(約6,200億円)とされ、中国市場での持続的な事業転換を示す重要な節目となる。
■ 合弁企業を設立、博裕が最大60%出資
今回の取引により、スターバックスと博裕投資は中国市場で新たな合弁企業を設立する。博裕投資が最大60%を保有し、スターバックスは40%を維持。スターバックスはブランドおよび知的財産権を引き続き保有し、新会社にライセンス供与する。
スターバックスは、中国事業の総価値を130億ドル(約2兆円)以上と見積もっており、その内訳は持分譲渡による対価、保有分の評価額、そして今後10年以上にわたって受け取るライセンス料収入から構成される。
新会社は引き続き上海を本社とし、中国全土に展開する約8,000店舗を運営。両社は今後、中国での店舗数を2万店規模にまで拡大する目標を掲げている。
■ 博裕投資、中国有数の大型投資機関
博裕投資は2011年に設立されたプライベート・エクイティ投資会社で、株式投資や不動産、新基盤インフラ、ベンチャー分野に強みを持つ。今年5月には北京の高級百貨店「SKP」の42~45%の株式を取得しており、推定取引額は150億元(約3,200億円)を超えた。
■ 経営トップのコメント
スターバックスのブライアン・ニコル会長兼CEOは「博裕が持つローカル市場での経験と専門性が、中国におけるスターバックスの成長、特に中小都市や新興地域への拡大を加速させるだろう」と述べた。
博裕投資のパートナーである黄宇鋮氏も、「26年間にわたり、スターバックスは中国で高級ブランドの象徴となった。我々はそのブランド力を高く評価すると同時に、より革新的で地域に根差した体験を提供する大きなチャンスを見出している」と語った。
■ スターバックス中国の業績は堅調
スターバックスが10月30日に発表した2025会計年度第4四半期(7~9月期)の総売上高は95億6,900万ドル(約1兆4,800億円)で、前年同期比5.5%増。営業利益は2億7,800万ドル(約430億円)で前年同期比78.7%減、純利益は1億3,300万ドル(約210億円)で85.4%減となった。
一方、中国事業は堅調を維持。第4四半期の売上高は8億3,160万ドル(約1,280億円)で前年比6%増、通期売上高は31億500万ドル(約4,800億円)と前年比5%増加した。同店売上高は2%増、取引件数は9%増で、4期連続の増収を記録した。
2025会計年度末時点で、中国国内の店舗数は8,011店に達し、1,091の県級都市へ進出。第4四半期には83店舗を新規出店し、年間では415店舗を新設した。
■ 売却交渉の経緯
スターバックスが中国事業の株式売却を検討しているとの報道は2024年後半から浮上。今年6月には高瓴資本、カーライル、信宸資本など複数の投資機関が関心を示していた。9月には博裕投資、カーライル、EQT、紅杉中国が最終候補に残り、10月末までに契約が成立したとみられる。
今回の取引によって、スターバックスは中国市場における運営の一部を現地パートナーに委ねることで、経営効率化と地域密着型戦略の強化を図る。一方、博裕投資にとっては、世界最大級の外食ブランドを通じて中国消費市場の拡大を取り込む絶好の機会となる。
(中国経済新聞)
