中国大手スーパーマーケットチェーンのRTマート(大潤発)を運営する「サンアート・リテール」(高鑫零售)は9月27日、香港証券取引所で株取引の停止を発表した。2020年に1000億香港ドル(約1.91兆円)を超えていた時価は80%以上も値下がりして170.8億香港ドル(約3264億円)となっている。「徳弘資本」や「高瓴資本」などが買収を検討しているとの情報もあるが、交渉は今のところ初期段階である。
RTマートは以前、中国の小売り業界の「頂点」に立った実績を持つ。1996年に黄明端氏と尹衍梁氏が潤泰集団の傘下企業として台湾で立ち上げ、1997年に中国本土に進出し、中国人が運営管理を企画した初めての大型の近代的スーパーをオープンさせた。2009年にはフランスの小売り大手「カルフール」を抜いて中国小売り業界のトップに立った。さらに2011年7月27日、フランス系の小売り大手「オーシャン」(中国名「欧尚」)の中国事業を合併して香港で上場し、サンアート・リテールがオーシャンとRTマートの事業主として、市場シェアでアメリカの小売り大手「ウォルマート」を抜いて中国のトップに躍り出た。
さらに中国EC大手のアリババが2017年、28.8億ドル(約4274億円)でサンアート・リテールの株式36.16%を取得した。アリババはその3年後に280億香港ドル(約5350億円)という追加投資を行い、サンアート・リテールに対する株式保有率を72%とした上、支配権も獲得した。RTマートはアリババのデジタル化改革で「ニューリテール」の先行実施先となっている。ところが、サンアート・リテールはアリババの強いサポートを受けながら業績が思うように回復せず、逆に赤字を抱え閉鎖する店も出してしまった。2024年度は売上高13.3%減で16.68億香港ドル(約319億円)の赤字を計上し、大規模店舗20店を閉鎖している。
サンアート・リテールの不振理由は、社内の構造改革だけでなく、通販サイトの突き上げやコスト上昇も挙げられる。アリババは2020年から実店舗での販売事業を縮小し始め、サンアート・リテールも売却されるとの噂も出ていた。
こうした中、サンアート・リテールは2024年3月、小売りの本質を取り返して売上の回復や増加を果たすべく、瀋輝氏をCEOに就任させた。しかしアリババは、事業の軸をITプラットフォームやAI、商業ネットワークのグローバル化にシフトしており、サンアート・リテールの売却もほぼ決定的となっている。
投資会社である徳弘資本と高瓴資本からすれば、サンアート・リテールの買収はかなり大胆な試みである。両者とも小売り業での投資経験は豊富であるが、RTマートのような大手のチェーンスーパーを相手にするのは異例の挑戦となる。サンアート・リテールは、資源を立て直し、新たなビジネスモデルを探索して息を吹き返させるという買収先の取り組みに、命運を預けることになりそうである。
(中国経済新聞)