中金資本の創業者失踪、腐敗問題が浮上

2025/08/23 13:30

中国を代表するプライベートエクイティ投資機関、中金資本(CICCキャピタル)の創業者および主要幹部が最近、連絡を絶ったというニュースが金融業界に衝撃を与えている。この事件は、中金資本の過去2年間にわたる内部腐敗問題を再び表面化させ、急成長の裏に隠されたガバナンスの傷跡を露呈した。

2025年7月初旬から、中国金融業界では中金資本の元会長、丁瑋(ディン・ウェイ)が「失踪」したとの噂が広がり始めた。報道によると、丁瑋は7月上旬以降、連絡が取れなくなり、紀律検査部門に連行され調査を受けているとされる。さらに、中金資本の現役幹部である安垣(アン・ユエン)も同時期に失踪したと報じられている。

丁瑋(ディン・ウェイ)氏

財新網によると、両者の失踪の具体的な理由は公式には明らかにされていないが、内部通達では、関連ファンドの設立や運用における問題が関与している可能性が指摘されている。特に、政府機関や国有企業関係者、その親族が関わる業界や分野が、現在厳格な調査や遡及調査の対象となっている。

中金資本は、国有の中国国際金融股份有限公司(CICC)の完全子会社として2017年3月に設立されたプライベートエクイティ投資の運営基盤だ。CICCは中国を代表する「貴族投資銀行」として知られ、中金資本はそのプライベートエクイティ投資業務の中核を担う。設立以来、母基金、混合所有制改革基金、PE、M&Aファンドなど、国内外のエクイティ投資業務を拡大し、2020年には管理資産規模が約3000億元に達した。この急成長は、丁玮のリーダーシップと戦略的ビジョンに大きく依存していた。

丁瑋は今年65歳。1982年に中国人民大学財政金融学部を卒業後、1987年から1999年までワシントンの世界銀行本部でエコノミストとして活躍。1999年から2002年まではドイチェバンク中国地区の社長を務めた。2002年にCICCに加入し、投資銀行部門の総責任者として、中国石油、工商銀行、農業銀行など大型国有企業のIPOを主導し、CICCの「貴族投資銀行」としての地位を確立した。2011年には一時CICCを離れ、シンガポールのテマセク・ホールディングス中国地区社長やモルガン・スタンレーアジア太平洋副主席を務めたが、2016年にCICCに復帰。中金資本の設立を主導し、2019年に会長に就任した。2020年8月、60歳で会長を退任したが、その後も顧問として関与を続け、厦門博潤資本投資管理有限公司の経営権を取得するなど、影響力を維持していた。

丁瑋の失踪は、単なる個人の問題にとどまらない。中金資本内部の複数の業務幹部も同時期に失踪しており、業界ではこれが金融機関全体を対象とした反腐敗キャンペーンの一環ではないかとの見方が強い。特に、2024年4月には北京証券監督管理局から丁瑋に対し、子会社管理や投資行動の不備を理由に警告書が発行されていた。この警告は、中金資本の内部統制に問題があったことを示唆しており、今回の調査がその延長線上にある可能性が高い。丁瑋と安垣の失踪は、ファンド設立や運用における不透明な取引や、地方政府や国有企業との連携における利益相反が調査対象となっている可能性が指摘されている。

中金資本の急速な成長は、地方政府や国有企業との広範な協力関係に支えられてきた。しかし、こうした関係は、返還投資の制約や関連取引の境界、中間管理コストの配分など、複雑な問題を引き起こす要因ともなっている。これらが厳格な調査の焦点となり、丁瑋の失踪事件は、こうしたガバナンスの弱点を浮き彫りにした。

(中国経済新聞)