ロイターは7月22日、関係者4人の話として、アメリカ半導体大手のエヌビディアが現在、中国向けに新型の人工知能(AI)用の旗艦半導体を開発しているとスクープした。今年3月に発表した「最強のAI用半導体」Blackwellシリーズをベースとし、アメリカ政府の現行輸出規制に沿った中国市場向けのモデルだという。アメリカではこの報道を受けてエヌビディアの株価が取引前で1.4%値上がりし119.67ドル(約¥18,411円)となった。
これら関係者のうち2人の話では、この「中国特別仕様」半導体は「B20」と名付けられ、エヌビディアは中国の主力販売会社である「浪潮信息」(Inspur)を通じて発売する予定とのことである。
また別の消息筋はロイターに対し、「B20」は2025年4月以降に出荷開始予定と述べている。エヌビディアはこれまで、アメリカの輸出規制に沿った形で中国向けに半導体「H20」シリーズを開発し、今年2月から注文を受け付けていた。ただしロイターは5月、性能が大きく劣る上に高価であることから、中国であまり評判がよくないと報道した。しかし2人の消息筋によると、「H20は最近、中国で販売好調だ」とのことである。研究機関のSemiAnalysisによると、今年の中国でのH20の販売量は100万個以上、価値にして120億ドル(1兆8,462千万円)以上となる見込みという。
中国はエヌビディアにとって重要な市場だが、アメリカ政府の縛りを受けて売上全体に占める割合が後退している。5月23日の大引け後に発表した2024年度第1四半期(4月まで)の決算報告を見ると、データセンター事業の売上における中国販売分の割合は、2023年度は19%だったが2024年度は14%に下がった。エヌビディアは電話による幹部会議で、中国は今後、競争が非常に激しくなるとの見方を示している。
ロイターによると、中国ではアメリカの輸出規制により、テクノロジー大手のファーウェイやテンセントが支援しているスタートアップ企業のEnflameなどが、先端AIプロセッサーの市場を拡大させているという。ロイターは先ごろ、消息筋の話として、中国の会社がアメリカのさらなる制裁強化を考えて、レベルダウンした「H20」を買いたがらず国内品でテストをしていると伝えた。検索エンジン大手のバイドゥは去年、エヌビディア品に代わりファーウェイからAI用半導体を購入している。消息筋によると、H20は仕様面で、基本項目である通常タスクの処理速度のランクについて、ファーウェイの「昇騰(Ascend)910B」の半分以下という。
芯謀研究のチーフアナリストである顧文軍氏は「環球時報」の取材に対し、「エヌビディアの特別仕様版が中国で大きく普及する可能性は少ない」と述べている。中国の半導体市場はトータルで見ればエヌビディアが優勢で、国産品は目下、部分的にシェアを稼いでいる程度だが、「エヌビディア品はエコロジー面や使いやすさで上回るものの、総合的な性能は一部の国産品に抜かれている」とのことである。
中関村情報消費連盟の項立剛理事長は、中国はすでにエヌビディア品を不要とする市場になりつつあると述べる。「特別仕様版」について、今は安定供給すら保証できない上、高まりゆく計算力へのニーズを満たせなくなっているので、中国企業が今回、エヌビディア品に頼る可能性は薄いという。アメリカの週刊誌「バロンズ」は、高性能の半導体はみなアメリカのさらなる制裁の対象となる恐れがあり、一方で性能の劣るプロセッサーはファーウェイなど強力な中国企業との競争にさらされると述べている。
(中国経済新聞)