イギリスの新聞「デイリー・テレグラフ」(The Daily Telegraph)は6月8日、「政府から『セキュリティーリスク』の対象とされた中国企業の製品が2023年、販売量が倍増した」と報道した。イギリス政府は19か月前に「危険性の高い」政府の場所での中国製監視カメラの設置を禁止した。その対象となる監視カメラの世界大手の一つ「ハイクビジョン」は、最新のデータでは売上高が逆に増えている。
これによると、イギリスの政府関係の場所でハイクビジョン製の監視カメラが使用禁止となった2023年、同社イギリス法人の全売上高は22%増えて5080万ポンド(約101億円)となり、直接販売額は1480万(約30億円)ポンドから2倍以上となる3260万ポンド(約65億円)に増えた。デイリー・テレグラフはこれらの数字について、「他社転売後の販売数が含まれていないのでハイクビジョンの事業規模全体を示すものとはならないが、イギリスでこのデバイスに対する需要が伸びていることがわかる」と伝えている。地元メディアによると、ここ数か月は店の盗難事件が増え続けており、心配感から監視カメラの設置が相次いでいるとのことである。
イギリスは、2022年11月にダウデン副首相が「一連の安全や人権における懸念感」から中国製の監視カメラを敏感な場所で使用しないようにとの命令を下した。ただし地元メディアによると、対象となるのは軍や情報設備など極めて強い安全性が求められる場所のみで、警察署などは除かれている。世界大手の一つであるハイクビジョン製の監視カメラは、学校、病院、地方議会などあちこちに設置されている。イギリス政府当局は、かなりの時間をかけて撤去すると表明したが、今年4月に内閣省庁は、「撤去済みはまだ50%で、すべて撤去するのは2025年4月になる」と表明した。
この禁止令は、実施当初から批判の声が上がっている。イギリスの「フィナンシャルタイムズ」は、サーバーセキュリティー会社「オックスフォードインフォメーションラボ」(Oxford Information Labs)のエミリー·テイラー(Emily Taylor)CEOの話として、「適切な措置に見えるが『安全』の理由が未確認である。逆に設備の禁止令をしたことで、地政学的な緊張状態が一段と悪化している様子が見えてくる」と伝えている。テイラーCEOは、メーカーによって機器が安全かどうかを判断するのはばかげたこと、と見ている。
ハイクビジョンは、イギリス政府の指摘を繰り返し否定しており、「国の安全を脅かす」というレッテルを批判した上、財産を守り公共の安全をもたらす上で大切な役割を発揮していると表明している。
(中国経済新聞)