久方ぶりの北京滞在(その4)

2023/11/21 09:00

引続き北京から最新情報をレポートする。

このシリーズ(その1)で、北京は軌道交通が発達しつつあると伝えたが、今のような状態になるまで永らくバスが生活の足だった。そのため今でも多数のバスが走行している。

  • パンタグラフ付きのトロリーバス。

北京ではトロリーバスが健在である。環境に優しいが走行中に架線の上げ下げで一時停止することがあり、スピードが遅いのが欠点である。列車好きの2歳の息子はこれを見て、「電車!」と叫んだ。いみじくも、トロリーバスは中国語で“电车”という。

  • 同じく青い車体のEVバス。

EVのバスはおおむね車体が青で統一されている。今回、目にしたバスはすべてこの色であり、北京の路線バスはどうやら完全電動化したようである。

中国語で盛んに出てくる“新能源汽车”は、便宜上「新エネルギー車」と訳してはいるが、水素の燃料電池車も含むものの事実上EVのことを指す。

また「バス」は中国語で色々な言い方があり、路線バスは“公交车”、または単に“公交”という。辞書や中国語のテキストに決まって出てくる“公共汽车”はほとんど言わない。また“公交”を辞書で調べると「公共交通の略」などと書いてあるが、実際には電車などは含まず純粋に路線バスのみを指す。

  • 緑色のバスもEVの路線バスで、車内は観光バスのように2人掛けのシートが並ぶ。

「バス」は音訳である“巴士”という言葉もあり、リムジンバスの車体には“机场巴士”と書かれている。ただし、車体の大きさから会話ではよく“大巴”という。“机场大巴”(リムジンバス)や、“旅游大巴”(観光バス)はネイティブ表現である。

  • バス停にて。路線ごとに「あと〇分で到着」と表示されている。

さらに、長距離を走るバスを“长途客车”、または単に“长途”という。日本で言う「高速バス」に近い。最近は鉄道網の発達で利用者が随分減っているようだ。ちなみにこの“客车”もバスのことであり、 “○○客车”などバスのメーカー名でよく使われる。鉄道で機関車に牽引された「客車」という意味ではない。

また“货车”はトラックを指し、鉄道の「貨車」という意味ではない。「トラック」は教科書や辞書にはたいてい“卡车”と書かれてあるが、実際にはこの“货车”や“物流车”の方がよく使われる。

  • 北京首都空港の搭乗口にて。

1週間の北京滞在はあっという間であり、結果的にコロナ禍からの脱却を強く感じるものとなった。またかつての友人や仕事関係者はみな、とても温かく迎えてくれて、感激で一杯だった。ただし、社会全体の景気や経済動向については悲観的な考えを示す人もいた。

今回の滞在中に、会食などで商談や雑談をした時間は都合9時間にものぼり、そのどれもが大変有意義で充実したものだった。経験的に、日本の政治関係者やビジネス関係者が中国側と「会談した」あるいは「商談や打ち合わせをした」といった場合、そのほとんどが通訳を通しての意思疎通か、もしくは日本語のできる中国人と終始日本語での対話となる。北京で長らく地域密着生活をしてきた私の今回の9時間はすべて、そのどちらにも該当しないものだった。(このシリーズ終わり)

(文・写真:森 雅継)

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【筆者】森雅継、東京都出身、早稲田大学商学部卒。北京在住歴17年で中国人の妻との間に2児、現在は家族4人で北海道札幌市に在住。