中国、越境EC事業者に対する一時的差止命令(TRO)が続出 その理由や対応方法は?

2024/07/31 11:30

中国の越境ECの事業者である暁林さん(仮名)は今年7月、アメリカから、取扱商品が商標権を侵害したとの理由で一時的差止命令(TRO=Temporary Restraining Order)を受けた。最近1年間で2度目の「制裁金」命令となる。TROはアメリカの裁判所による指示内容であり、ほとんどの場合は原告側の訴えを受ければ事前予告なく直ちに発表され、審理が進むまで被告側は何らかの行動が制限されたり資産が差し押さえられたりする。

暁さんは、残高5万ドル(約770万円)以上という口座が即座に差し押さえられた。TROの指示に従わなければ店やすべての資金を手放すことになり、従えば高額の費用や長期にわたる裁判への対応が必要になる。事業者のほとんどは、損失を防ぐために差し押さえ額の半分を支払う形で和解に至る。

中国では、このような事態に陥る越境ECの事業者が増えている。輸出用包装材を製造している暁さんの会社は最近9か月でTROを2度も受け、和解のために2.8万ドル(約432万円)を費やした。また、北京のあるスポーツシューズの輸出業者も、商標権を侵害したとして4.4万ドル(約679万円)を差し押さえられ、2万ドル(約300万円)余りを支払って和解した。訴訟は費用がかかること、また手順が煩雑であることから、やむなく和解するケースが多い。

中国では、米中貿易摩擦や世界経済の後退という流れを受け、越境ECに参入する企業が増えており、激しい競争もの中でTROを受けるケースも増えている。アメリカの法律事務所では、購入者として中国の越境ECサイトに登録し、各業者に対して見積もりを出させ、画像やサンプルを求めたり、侵害行為への証拠を集めるべく少額の注文をしたりして、起訴した上で和解金を手にするという「フィッシング」行為をする例もある。

こうした「制裁金」について、受けた側からすれば、訴訟費用が高額なので釈明は事実上不可能である。侵害行為の有無にかかわらず確実に損をすることになり、それを最小限に食い止めるためにすんなり金を払って和解する。こうした現実の中、最近は中国企業が対象となるケースが多く、「制裁金」を被る回数が目立って増えている。

匯業弁護士事務所のシニアパートナーである王函氏は、「業者側はまず知的財産権を重視すべきで、逃れようなどと思ってはならない。新商品に対して知的財産権を厳しく審査する体制を設け、このようなリスクを事前に洗い出して軽減すべきだ」と主張する。中国企業は知的財産権について、後先のことを考え、保護することを目的にグローバルな取り組みをし、特に海外進出や越境ECが盛んになる中で海外でも体制を整え、その際に後の訴訟問題も配慮しておくべきだという。さらには海外でのトラブルを防ぐために知的財産権のリスク予防体制も施した上、企業でコンプライアンス制度を打ち立て、整備しておくべきとも述べている。

(中国経済新聞)