7月中旬、中国・深圳の高級住宅地「翡翠海岸(ひすいかいがん)」において、ある89平米のマンションがピーク時から1,100万元(約2.4億円)も安い価格で売却されたことが明らかになった。この物件は、同じ間取り・面積の中でも最上階に近く、眺望も良好で、かつては2,550万元(約5.5億円)で成約された実績がある。
今回売却された住戸は、将来的に東角頭地区の建築によって一部の海景が遮られる可能性はあるものの、現在でも深圳湾を望む景色が魅力とされている。それにもかかわらず、価格は1,420万元に設定され、ピーク時からの下落幅は実に44.3%にも達しており、2017年末以降では最安値となった。
注目すべきは、売主が「一括払いが可能であれば、さらに値引きの余地がある」とまで発言している点である。これほどまでに売却を急ぐ背景には、過去2ヶ月間にわたり3度目の売り出しとなる経緯がある。初回・2回目の売却交渉では、中介業者(不動産仲介)の誤った情報や市場の不安定要因により契約が破談。売主は資金繰りの切迫から、今回こそは確実に成約させたいと大幅な値下げに踏み切ったという。
このような価格下落は翡翠海岸だけにとどまらず、深圳湾エリアの89平米クラスの物件全体に広がりつつある。複数の不動産業者によると、「この面積帯の住宅は、投資目的の買い手が多く、景気の下振れや融資の引き締めに最も敏感なセグメント」と指摘されている。
深圳市は近年、不動産価格の過熱と規制強化の波にさらされており、一時は全国でも最も高価格帯の都市として注目を集めた。しかし現在では、市場全体の冷え込みや高額物件の売れ残りが目立ち、不動産市場の転換点に差し掛かっているとの見方もある。
(中国経済新聞)