中国のIT企業がブラジルに眼差しを向けている。デリバリーサービスを手掛ける美団は5月12日、傘下のKeetaを数か月以内にブラジルに導入し、この事業を支援するため5年間で10億ドルを投資する予定と発表した。またこの日、配車アプリのディディがブラジルでのサービスを拡大し、電気自動車の充電所を1万か所建設するという情報も伝わった。
ブラジルは今、中国のIT企業における重要な海外進出先となっている。
美団の王興CEOは、「KeeTaは、投資契約に基づきブラジル国内で全国的な即時配達網を打ち立てる。また現地の提携業者に対して、総合的なサービス、多様なマーケティングツール、デジタル運営ツールを提供し、飲食業の成長を支援する」と述べている。
2023年から海外展開をしている美団は、Keeta を2年前に香港で導入したほか、2024年9月にはサウジアラビアにも導入して今は主要都市をほぼカバーしている。美団によると、利用者の数や注文数も急激に増え、対応する店舗も増えているという。
王CEOはこれについて、「国際化は長期成長戦略の一つであり、海外市場を開拓し新たな成長の場を生み出すよう努めていく」と述べている。
またディディは4月5日、「99 Food」との商標でブラジルでのデリバリー事業を再開すると発表した。現地の交通や決済など様々なサービスを支援するという。
ディディは2018年に同業の「99」を買収する形でブラジルへ進出し、配車やフィナンシャル、配達などのサービスを手掛けたが、2023年4月に2輪車でのサービスに専念するとの理由でブラジルのデリバリー事業を撤退していた。
ディディは今、ブラジル国内で活動中の配達員およそ70万人と常連客5000万人を抱え、大小3300以上の都市で配達や配車サービスを手掛けている。このうち2輪車による交通サービスは利用件数がここ3年間で10億件を超えている。
ディディにとって海外事業は、成長を支える柱である。2024年第4四半期、海外での交通サービスの利用数は10.16億件であり、前年比増加率は中国国内の10.8%を上回る29.8%であった。また1日当たりの利用数は1100万件以上となっている。
中国企業がこぞってブラジルでデリバリー事業を展開している理由について、最近の海外進出を研究している黄渊普氏は以下3点の理由を挙げている。