虚偽広告疑惑で揺れる小米自動車、300人超の購入者が消費者運動

2025/05/12 11:38

わずか2か月で、小米(シャオミ)自動車は「人気の頂点」から「詐欺の中心」へと転落した。3月末、高速道路で小米SU7が炎上する動画がネット上で大きな話題となったが、5月初旬にはさらに激しい「消費者運動の嵐」が巻き起こった。300人以上のSU7 Ultra車両所有者が一斉に車両の返品を求め、一部の車両所有者は自腹で3000元の弁護士費用を負担し、小米に立ち向かっている。

この騒動の発端は、4.2万元(約80万円)の追加料金で提供される「カーボンファイバー製ダブルダクトフロントボンネット」の仕様が、宣伝内容と一致しない疑いが浮上したことだ。小米は、このボンネットが空気抵抗を軽減し、冷却性能を向上させる「ハイテクダクト」を備えていると宣伝していた。しかし、実際にボンネットを分解した車両所有者たちが発見したのは、内部構造が通常モデルとほぼ変わらない「空洞の蓋」に過ぎなかった。

さらに衝撃的だったのは、ある所有者が送風機を使ってテストしたところ、ボンネット上のティッシュが全く動かず、気流が通っていないことが明らかになったことだ。ネット上では、「ポルシェの穴は冷却用、小米の穴は消費者を騙すためのもの」と揶揄する声や、「カーボンファイバーボンネットはわずか1.3kgの軽量化にしか貢献せず、4万元以上の追加料金はコストパフォーマンスが低すぎる」との批判が飛び交った。

今年2月のSU7 Ultra発売時、雷軍CEOはライブ配信で「外観だけでなく、内部構造も改良した。ダブルダクトはホイールハブに直接空気を導き、冷却をサポートする」と自信満々に語った。この発言と、4.2万元という高額なオプション価格が、性能を重視する多くの消費者を引きつけた。特に小米の熱心なファンたちは、雷軍の言葉を信じて購入を決意した者も少なくなかった。しかし、4月末に最初の納車を受けた車両所有者たちがボンネットの真相を知り、「信頼が崩れた」と失望を口にしている。

5月7日深夜、小米は公式声明を発表し、「情報の表現が不十分だった」と謝罪。未納車分の注文については通常ボンネットへの変更を認め、すでに納車済みのユーザーには2万ポイント(約2000元、約4万円)の補償を提供するとした。しかし、この対応は消費者にとって到底納得できるものではなかった。通常ボンネットへの変更には再び30週以上の納車待ちが必要であり、2万ポイントの補償は4.2万元のオプション料金に比べ「焼け石に水」と感じられた。ある車両所有者は、「4万以上払って飾り物のようなボンネットを買わされ、2000元の補償で済まされるなんて、まるで乞食扱いだ」と憤慨している。

現在、300人以上の車両所有者が結集し、返品を求める集団訴訟の準備を進めている。彼らは共同でビデオを制作し、SNS上で維権(権利擁護)運動を展開。ネット上では、「小米のマーケティングは行き過ぎ」「スマートフォンの宣伝手法を自動車に持ち込んでも、消費者は騙されない」との声が広がっている。さらに、小米の過去のトラブル——高速道路での炎上事故や、OTAアップデートによる馬力制限問題——も掘り起こされ、ブランドの品質管理や信頼性に対する疑問が高まっている。

この騒動は、新エネルギー車(NEV)業界が抱える深い問題を浮き彫りにしている。まず、自動車メーカーが注目を集めるために、性能や技術を誇張する傾向が強い。小米の馬力制限問題も同様に、消費者からの大きな反発を招いた。次に、消費者は高額なモデルを選ぶ際、宣伝文句に頼りすぎ、技術的な詳細を十分に理解していない場合が多い。さらに、業界の規制にはまだ不備がある。中国工業情報化部は最近、スマートカーのソフトウェアアップデートに関する管理規定を発表したが、具体的な執行力や罰則の強化が求められている。

雷軍CEOは5月7日、自身のSNSで「この1か月余りは小米創業以来最も困難な時期だった」と述べた。しかし、謝罪だけでは問題は解決しない。法律専門家は、小米の行為が『消費者権益保護法』に違反する可能性を指摘し、車両所有者には「1台返品につき3倍の賠償」を求める権利があるとしている。一方、消費者にとってもこの事件は教訓となる。自動車購入時には宣伝に惑わされず、実際のニーズを冷静に判断し、必要に応じて法的手段を活用することが重要だ。

(中国経済新聞)