奇瑞汽車会長、中国自動車市場の混乱を批判

2025/05/12 07:30

現在の中国自動車市場は、熾烈な競争が繰り広げられており、「百舸争流(ひゃっかそうりゅう)」という言葉で形容されるほどだ。新ブランドが雨後の筍のように次々と登場し、明日には上場、明後日には販売台数トップを目指す勢いである。このスピードは、目まぐるしく業界を変化させている。

そんな中、奇瑞汽車の尹同躍会長が5月7日に発した一言が、自動車業界に波紋を広げた。「一部の企業は、成功を急ぐあまり、自社の基盤も整えずに市場に飛び出そうとしている!」この発言は、率直ながらも業界の深い懸念を内包している。

尹会長はさらにこう述べた。「我々のような古参の自動車人から見ると、国内での一部の宣伝はあまりにも大胆すぎる。他人から見れば私が慎重すぎるのかもしれないが、例えば我々は一つのプラットフォーム開発に通常6年かける。しかし、国内の多くの企業は設立から6年も経たずに、複数の車種を次々と生み出している。これは我々にとって理解しがたいことだ。かつて我々がプラットフォーム開発に60億元を投じたが、多くの企業の総資産は60億元にも満たない。」

今年4月、小米(シャオミ)が発売した電気自動車(EV)「SU7」は、「世界をリードするAI自動運転」を謳い文句に市場に登場した。しかし、4人の女子大学生が高速道路でSU7の自動運転機能を使用して運転中、路盤に衝突し、ドアが開かずに焼死するという痛ましい事故が発生した。この事故は、中国の伝統的な自動車メーカーから、新興自動車メーカーの無謀な進出に対する批判を引き起こした。尹会長は小米を名指ししなかったものの、その批判の矛先が小米などの新興企業に向けられていることは明らかだ。

中国乗用車協会によると、2025年には中国市場で115車種の新型車が発売される予定だ。その大半は新興企業が開発したEVで、長期間の安全運転検証が不足しているケースが多い。このような過密な新車投入は、市場の混乱をさらに助長する恐れがある。

尹会長の発言は、急成長する中国自動車市場における品質と安全性の重要性を改めて浮き彫りにした。業界全体が持続可能な発展を目指すには、新興企業の技術開発と安全基準に対する姿勢が問われている。今後、消費者の信頼を確保し、悲劇を繰り返さないための取り組みが急務である。

(中国経済新聞)