中国で最近、「レディースウェアの通販店、返品率80%に悲鳴」とのニュースが論議を呼んでいる。今年の通販セール「618」では、レディースウェアの売上高は1000万元(2.17億円)近くに達したが、「返金のみ(返品不要)」の分の350万元(約7612万円)と返品・返金分の380万元(8265万円)を差し引き、さらに諸費用を差し引くと、50万元~60万元(約1087万円~1305万円)の赤字計上と見られる。
通販業界は今年に入り、おしなべて返品率が急増している。タオバオで医療機器を販売している陳力勤さんは、3年前は返品率が2-5%だったが今は30%以上だと言う。数日前、半年前に売った血糖値測定器の返品を求められた際、初めは断ったが、そのすぐ後にアプリで返金済みであることが分かった。16年間サングラスの販売をしている木子さんやTiktokでレディースウェアを売っている斉菫さんも似たような経験をしており、斉さんは返品率が90%以上という状態である。
このような状態で、売主の利益も減る上に店の評価や利用度も落ちている。以前はレディースウェアや家具を扱い、その後10年にわたりメンズウェアを手掛けている林鵬さんの勘定によると、返品1件につき表向きの費用が10元前後(約217円)かかり、また返品送料保険や減点分が都合5元前後(約109円)で、この分は注文と同時にアプリに送られて戻らない。さらに出荷時の配達料や包装、そして配達止めにかかるお金を合わせて5元(約109円)近くかかり、これに輸送ロスや限界費用も加わる。林さんにとっては返品率50%がボーダーラインであって、注文10件のうち取引完了が5件のみであれば、利益はすべて消えてしまう。
こうした現象について、販売側はおおむね、消費者行動の変化だけでなくアプリ側の制度も原因であるとみなしている。各大手通販サイトが低価格戦略や「返金のみ」ルールを実行していることで、売主側に高い返品コストがのしかかる。6年前からタオバオでアパレル品を売っている万佩佩さんによると、「通販業界は6年前は落ち着いていた。『送料込み』も『返品送料保険』もさほど多くなく、利益は多くなかったが売上は安定していた」と述べている。
このところ主要アプリがこぞって安売りや返品サービスを実行していることで、返品率は上がる一方である。2023年末に「拼多多」の時価が「アリババ」を上回り、業界を驚かせた。タオバオもこの年12月に、「トラブル処理規則」を買い手側に有利になるよう改めており、さらに返品問題が取りざたされるようになった。
返品率の上昇で販売側の費用対効果が悪化する上、通販市場自体にも悪影響が出ている。撤退するケースも多く、斉さんは10万元(約200万円多)ほどの赤字を抱えて、在庫一掃後に閉店する予定という。また木さんは、負担が重すぎて閉店すらできず、返品率の高さと利益の安さにあえいでいる。
この状態では、アプリや運送会社が受益者で販売者がほぼ被害者となる。また消費者は果たして受益者なのか被害者なのか、人によりけりであり、しばらく様子を見なくてはならない。
(中国経済新聞)