中国のスポーツ用品大手「LI-NING」(李寧)は、このところ業績が落ちる一方であり、2023年は売上高こそ7%増えて275.98億元(約5940億円)だったが、純利益は21.58%も減じて31.87億元(約686億円)であった。その一方で、同じくスポーツ用品大手の「ANTA」は売上高が623.56億元(約1.34兆円)、純利益は前年比34.9%増の102.36億元(約2203億円)と、対照的な結果を残している。
LI-NINGブランドは、「体操界のプリンス」であった李寧氏が1990年に立ち上げ、たちまちにして「国潮」(中国風トレンド)をけん引する存在になった。まずはアジア大会の協賛社となって知名度を上げ、2004年に上場を果たし、中国スポーツ市場の中心的存在にのぼり詰めた。ところがマーケットの変化や海外勢との競争に見舞われ、先行きが怪しくなっていった。
LI-NINGは2010年から「高級化+若年化」という形への改革を進め、ブランドイメージを改めて若者層の取り込みを図った。その後2018年にニューヨークのファッションウィークで見事な出来栄えを見せ、「国潮」の代表格とのイメージを打ち立てたが、高価な売値の一方で安売りセールを度重ね、これが消費者の不満感情を高める結果となった。
この価格問題は、イメージが崩れた大きな原因である。LI-NINGは2018年から2023年にかけて値上げの一途をたどったが、その一方でしばしば安売りセールを実施したことで、違和感や不満感を抱かれてしまった。「650元(約14000円)で買ったウェアが1か月たたずに300元(約6460円)まで値下がりした」などというケースも出ており、どっちつかずのやり方に苦情も出た。
ブランドイメージを保とうとしたLI-NINGは、マネジメント策と営業策がちぐはぐな状態になった。シャオ・ジャンやホァ・チェンユーという人気者を広告タレントに起用して耳目を集めようとしたが、事態を挽回するほどの結果は得られず、逆に一部で不買運動なども招いてしまった。
また、商品開発やイノベーションについても業界内で後れがちになっている。技術面で言えば、研究開発費の割合が同じスポーツブランドの「ANTA」は2.6%であるが、LI-NINGはこのところ1.8%~2.2%にとどまっている。こうした「営業重視・開発軽視」との姿勢により、高級品目では競争力が伸びなくなっている。
中国ではアウトドアスポーツや特定用品の売れ行きが伸びているが、LI-NINGはこれらについても対応しきれていない。アークテリクス(ARC’TERYX)など海外ブランドの買収を通じて取り扱い品目の拡大を進めているANTAに対し、李寧は依然として単独ブランドにこだわり、多元化する競争に取り残されている。
2024年に入って「国潮」ブームも一服してしまい、LI-NINGは市場の位置づけや取り組みを見直す必要に迫られている。会社を非公開化するなどという噂もあり、新たな方針を探っているように見える。改革を進める中、これまでの伝統とマーケットニーズのバランスを取りながら国内外の競争力の回復をはかる必要がある。
(中国経済新聞)