中国の自動車業界は2023年、生産・販売ともに過去最高を記録しながら利益率は伸びなかった。中国乗用車市場情報連席会(乗連会)によると、自動車業界の年間売上高は前年比12%増の10.1兆元(約208兆円)であったが、コストが同13%増の8.8兆元(約181兆円)、利益は前年比5.9%増の5086億元(約10.46兆円)で、利益率は5.0%にとどまり、工業界全体の平均の5.8%を下回った。
これについて、乗連会の崔東樹事務局長は、「2023年は生産・販売とも好調だったが利益の出所が変わっており、輸出や高級車に依存している。大部分の企業が利益ダウンで、存続が危ぶまれる企業も出ている。ガソリン車は利益が出るが急速に後退、新エネ車は成長しているがかなりの赤字である」と述べている。
この中で、ブランド力のある高級車は利益が高い。2023年、中国全体の自動車輸出台数は56%増の522万台に達し、金額では69%増の1016億ドル(約15兆円)、1台当たりの売値は微増し1.9万ドル(280万円)となった。海外向けの車種は国内販売分よりも高値なので利益が出やすい。
自動車業界の利益率はこのところ下がり続けており、2015年には8.7%だったが2023年は3.7ポイント減って5%であった。1台当たりの利益は2015年の2.4万元(約49.3万円)から2023年には1.69万元(約34.8万円)へ下がり、コストが上昇傾向にある。
2023年は利益率がさらに落ちており、ガソリン車は事業規模が縮小、新エネ車は成長しているが赤字で、激しい競争や価格戦にさらされ、一段と利益が出にくくなっている。同花順のiFinDデータによると、2023年1~9月は、A株上場の乗用車企業20社のうち7社が親会社帰属の純利益を減らしており、新エネ車メーカーはほぼ赤字でその額も拡大している。
中国の自動車産業はまた、生産過剰が深刻である。2022年末現在、乗用車については4289万台分の生産設備があるが生産台数は2702万台で、利用率は63%にとどまり、1500万台分の設備が遊んでいる。
また、外資系メーカーが市場シェアを落としている中、新エネ車に力を入れている国内勢が躍進している。ただし利益率については、安定し競争の少ない欧米市場で売れ行きが堅調である外資系が優位である。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーである管鳴宇氏は、「活況に見えるスマートEV市場の背後で、メーカーが利益を出せなくなっている。中国自動車市場は規模や利益で世界の30%を占めるが、国内企業の利益総額は5%未満で、随分開きがある」と指摘している。メーカーはコストや価値の位置づけ、効率的な開発などを通じて利益を産む体制を築くべきだ、とのことである。
価格戦が続くと見られる2024年について、中国EV百人会の張永偉事務局長は、「業界再編の重要な時期となり、国内にワールドクラスの会社が現れるのではないか」と見ている。今は結論付ける時期ではないと強調している。
(中国経済新聞)