秋になってもらしからぬ残暑の続く北海道・札幌より。
9月16日午後、札幌市の公益財団法人でボランティア中国語通訳者に登録している私は、「北大キャンパスツアー中国語演習」に参加した。
- 大学正門の地図の前で集合写真。キャンパスは大変広く、実際に回ったのは南側の3分の1程度だった。
ところで、コラムタイトルの「北大」はもちろん北海道大学のこと。北京滞在歴の長かった私は、いまだに北京大学の略称である「ベイダー」(=北大)などど読んでしまう。また現地に住む中国人も北海道大学のことを「ベイダー」と呼んでいる。
今回は主催者側を含む計8人が集まり、ガイド原稿を片手に主要スポットを見て回った。まずは、きれいなせせらぎが目に入った。
▲人工的に造られたこの小川は、アイヌ語で「サクシュコトニ川」という。
アイヌ語から中国語に音訳した“克托尼”という地名は今、日本語で「琴似」となり、札幌駅からJRで2つ目にこの名の駅がある。ご存知の通り北海道の地名はほとんどアイヌ語由来であり、現地の読み方に適当な漢字をあてているのは中国の内モンゴル、チベット、新疆ウイグルの各自治区など地名とほぼ同じだ。よって中国の地名を読むにあたり、通常は「天津=てんしん」、「武漢=ぶかん」などのように漢字を日本語読みするが、現地語由来の場合は元の現地語で呼び、カタカナ表記することが多い。“呼和浩特”は「こわこうとく」ではなく「フフホト」、“和田”は「わだ」ではなく「ホータン」である。
そして北大といえば、もちろんこの人物である。
▲“威廉S克拉克”、つまり「クラーク博士」。
だたしこのクラーク博士、ボランティアリーダーを務めた塩畑さんの話では、中国では知名度は低く本国のアメリカでもさほど有名ではないという。このように外国での方が知名度が先行している人物は結構多い。実は私もそうなりたかったが。
ただ中国では、あの名言「Boys, be ambitious=少年よ大志を抱け」は“少年要胸怀大志”と訳されて、同じく名言となっている。
さらに進むと、中国由来の植物が目に入って来る。
▲白い紙の右に見える緑のつぼみ状のものが「オオウバユリ」。中国語で“荞麦叶大百合”という。紙には“白合“と書いてあるがこれは誤記だろう。
都合2時間ほどキャンパスを見学し、最後に着いたのがこの見事なイチョウ並木である。
▲イチョウ並木。北大のメインストリートである。
ところでこのイチョウ、中国語では“银杏”といい、「ぎんなん」は“白果”という。秋になるとその“白果”拾いに勤しむ姿を中国でよく見かけたが、日本ではその臭いが公害扱いされるので植えられているのはほぼオスの木だ、とリーダーから教わった。いかにも潔癖症の日本人らしい行政策である。
- リーダーの塩畑さん(左)。10年前に仕事をリタイヤしてからボランティア活動に心血を注いでいる。右:筆者森雅継。
かつて電気関係の製品を扱うビジネスマンで日中両国を行き来していた塩畑さんによると、中国人観光客の数はやはり処理水排出の影響でかなり減ってしまったという。ただしこちら札幌では、去年に続き「チャイナフェスティバル」を10月下旬に実施予定であり、あくまでも前向きに両国関係を捉えるよう心掛けたい。
*******************************************************
【筆者】森雅継、東京都出身、早稲田大学商学部卒。北京在住歴17年で中国人の妻との間に2児、現在は家族4人で北海道札幌市に在住。