外国人との共生社会を築くには

2025/07/7 12:30

最近、日本に住む外国人は、ビザの審査が厳しくなり、また審査の期間も長引いていると感じている。また政府が外国人コミュニティーの取り締まりを強化する策を打ち出しており、心配感が高まっている。

 確かにここ数年、「資本金500万円を用意」という楽な条件で「経営管理」ビザを取得し、日本に移り住む外国人も出てきている。民宿の経営や不動産売買、あるいはペーパーカンパニーの設立といった形であって、社会に利益をもたらすこともなく、逆に医療や教育、社会保障などの福利対応を享受していることで、日本人の不満を招いている。

 この問題はしかし、何もかも外国人が悪いというわけではい。外国人の管理体制に欠陥が存在していること、また「性善説」に頼りすぎていることも原因と考えられる。外国人が社会で平和的に共存するという共生社会を根本から築き上げるには、制度や文化、社会で総合策を講じる必要がある。

 まず、在留管理制度には明らかな不備がある。「経営管理」ビザを例に挙げると、会社を興せる能力のある外国人を招くことが主旨ではあるが、審査やその後の管理体制が不十分で、虚假の書類やペーパーカンパニーでビザを取得するケースもある。また日本の在留政策は以前から「包括的」でなく「技術的」なものであって、外国人を社会に馴染ませるものにはなっていない。こうした「審査重視、管理軽視」により、抜け穴をくぐる外国人もいる。

 次に、外国人を見る目が日本古来の伝統に縛られている。「性善説」に基づいたもので、政府も市民も「ルールは守ってくれるはず」と過度に信頼してしまう傾向がある。こうした考え方は、複雑化する国際関係では甘さが浮き彫りになる。法律やマナーを知らなかったり、あるいは金銭目当てでわざと違法行為を働いたりする外国人もいて、社会的に対立が激しくなってしまう。

 外国人との共生を果たすには、以下のような行動をとるべきと思われる。

 一、在留管理制度の整備

 まず政府は、「経営管理」ビザの審査や管理を強化すべきだ。外部の監査機関を導入してビザ取得者の会社の経営状况を定期的にチェックし、真実性や合法性を確保することだ。ペーパーカンパニーや違法な営業活動に対し罰則規定を設け、かつビザの更新時に審査対象とする。さらに、シンガポールなどの経験を参考に、日本での納税履歴や社会的貢献度、法の順守といった点をポイント化して評価する制度を設ける形で、心から社会に貢献したいという外国人を選び抜くのである。

 二、文化の融合や教育の強化

 共生社会を支えるものは、文化的融合である。政府は無料もしくはそれに近い形で日本語教育や法律セミナー、ボランティア活動を実施して、日本の社会的ルールや価値観を学ばせるなど、外国人に対する文化の教育に力を入れるべきである。

 また社会も、多元的な文化を受け入れなければいけない。固定観念や偏見を払拭するため、メディアや公の場で、外国人の起業事例やボランティア活動など、前向きに貢献している姿をどんどんとPRしたらどうか。地方自治体も、相互理解の促進に向けて外国人参加型の地域活動を催すべきだろう。

 三、納税制度の改革で外国人の投資や起業を支援

違法な民泊などの迷惑事例を避けるため、地域で宿泊機関などと提携して参入や管理を強化した制度を設け、法に沿った形で経営させるようにする。また、単なる不動産投機でなく中小企業や地方経済への投資を促せるように、外国人の納税制度の改革などを政府の方で講じるのもよい。

 四、福利待遇の配分や社会的公平

 外国人が医療や教育などの福利制度を受ける際は、貢献度に見合ったものとすべきだ。納税額や就労年数、あるいはボランティア活動の期間に応じて、それらを利用する権利を適時調整するなど、「ポイント制」の導入を検討したらどうか。これにより外国人も社会に溶け込む姿勢が生まれるし、市民も福利制度の乱用に対する心配感が緩和する。

 さらに、「外国人は得だ」などという誤解を払拭するため、政府の方で税収や経済面における外国人の貢献度を知ってもらうようなPRを実施するのもいいだろう。

 共生社会を作り上げるには、政府、市民、外国人がともに努力する必要がある。この三者間で好循環が形成されれば、グローバル化が進む中で特色ある日本文化も維持できるし、外国人との平和的な共存も果たせるだろう。

(文:徐静波)

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【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。

 講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。

 日本記者クラブ会員。

(中国経済新聞)