中国の新興EVメーカー・小米汽車(シャオミ・モーターズ)が、かつてない販売記録を打ち立てた直後に、急激な需要冷え込みに直面している。
6月末、小米汽車が発表した第2弾モデル「YU7」は、発売開始からわずか1時間で28.9万台の予約を獲得し、18時間で24万台の正式注文(ロックイン)が記録された。この数字は中国の新エネルギー車業界の記録を大きく塗り替え、「小米の快進撃が始まった」との声が市場を賑わせた。
しかし、現実はそう甘くなかった。7月最初の1週間(6月30日〜7月6日)の小米汽車の新車保険登録台数(実質的な販売数)はわずか4890台。前週比で46.2%も落ち込み、「新勢力」系EVメーカーの中で最大の下落幅を記録した。市場はこの急落に驚きを隠せない。
販売減少の主因は複数ある。まず、YU7の発表によって、すでに発売されていた初代モデル「SU7」の購入を検討していた消費者が様子見に転じたことだ。「新しいYU7の方が良さそうだ」と考えた顧客が注文を控えたことで、SU7の販売がブレーキをかけられた。
また、YU7の爆発的な受注により、工場の生産能力が限界に達している。SU7とYU7を同時に生産する必要があるが、現時点では増産体制が整っておらず、生産リソースの奪い合いが発生している。結果、両モデルとも納車が大幅に遅れ、販売実績に反映されていないのが現状だ。
この「生産能力」と「納車遅延」の問題は、小米汽車の足かせとなっており、CEOの雷軍(レイ・ジュン)自身も以前から懸念を表明していた。SU7の発売前に出演した中国中央テレビ(CCTV)のインタビュー番組『面対面』では、「最初に1台も売れないのが怖い。でも、逆に売れすぎて1年も待たされるようになるのも不安だ」と語っていた。

懸念は現実となった。現在、小米汽車の公式アプリで示されている納車予測期間は、顧客にとっては非常に長い、YU7 車は57〜60週(約13〜14ヶ月)をかかる。
つまり、今注文しても、実際に車が届くのは1年後という状況だ。待ち時間があまりにも長く、一部の顧客はキャンセルを検討する動きも出ているという。
このような状況になった背景には、大きく2つの要因がある。
第一の要因は、需要が小米の想定をはるかに上回ってしまったことだ。小米はスマートフォンでの成功を背景に自動車事業に参入したが、ここまでの反響は予測できなかった。生産能力もSU7用に計画されていたため、追加で大規模な対応をする余力がなかった。
第二の要因は、EV製造における複雑なサプライチェーンである。EVは多数の部品と高精度な技術を必要とし、バッテリーや半導体などの供給も不安定だ。生産ラインを急速に増やすことは簡単ではなく、現実的には時間をかけて段階的に増産していくしかない。
小米汽車にとって、ユーザーの期待に応えられるかどうかが今後の命運を分ける鍵となる。どれだけ予約が殺到しても、納車までの時間が1年もかかるようでは、顧客の熱は冷めてしまうかもしれない。EV市場は競争が激しく、ライバル企業も次々と新モデルを発表している。
注文の勢いだけでは、長期的な成功は保証されない。小米汽車が生産体制のボトルネックをいかに早急に解消し、納車を加速できるかが問われている。
(中国経済新聞)