小米(シャオミ)が自社開発の3nmチップ「玄戒O1」を発表し、業界内外で大きな注目を集めています。しかし、高通(クアルコム)のCEO、クリスティアーノ・アモン氏は、CNBCのインタビュー(2025年5月19日)で、小米のチップが自社のビジネスに影響を与えないと発言し、小米が依然として高通の技術に依存している可能性を示唆しました。この状況はまるで「羅生門」のように複雑で、複数の視点から分析する必要があります。
小米は「玄戒O1」が台積電(TSMC)の第2世代3nmプロセスを採用し、フラッグシップチップに匹敵する性能を持つと主張しています。アップル、高通、聯発科(メディアテック)に続き、世界で4番目に3nmチップを発表した企業となりました。しかし、業界関係者やネットユーザーの間では、そのコア技術が完全な自社開発ではないとの疑問が浮上しています。たとえば、CPUやGPUはARMの公版アーキテクチャを基盤としている可能性が高く、NPUモジュールや5Gモデムチップ(外付けの可能性)もサードパーティのサプライヤーに依存していると考えられます。さらに、小米は高通と15年間のチップ供給契約を結んでおり、フラッグシップモデルでは引き続き「スナップドラゴン8シリーズ」を使用する予定です。このため、「玄戒O1」は高通の技術フレームワークを最適化したもの、またはIPライセンスに基づく設計である可能性が指摘されています。

高通CEOのアモンは、小米の自社チップが量産化されたとしても、高通のサプライチェーンにおける地位を揺るがすものではないと強調しました。仮に「玄戒O1」が市場に投入されたとしても、小米15S Proやタブレット7 Ultraなど特定製品に限定され、高通チップを全面的に置き換えることはないと高通は見ています。チップ設計には、米国が支配するEDAツールやARMのライセンスが必要であり、製造はTSMCに依存するなど、供应链は依然として西側の技術エコシステムに縛られています。高通の自信は、広範な技術ライセンス網と、小米のフラッグシップモデルにおけるスナップドラゴンチップの継続的な需要に基づいていると考えられます。
小米が3nmチップを大々的に宣伝する背景には、「ハードテクノロジー」企業としてのブランドイメージを確立し、「組み立て工場」というレッテルを払拭する狙いがあります。自社チップの開発は、コスト管理、競争力の差別化、サプライチェーンの安全性確保に戦略的意義を持ちます。特に、ファーウェイが米国の制裁で先端チップの開発が制限される中、小米は中国国内の先端チップ設計の空白を埋めようとしています。しかし、このマーケティング戦略は議論を呼んでいます。一部のネットユーザーは、「3nmという数字を宣伝の目玉にしている」と批判し、ファーウェイのようなソフト・ハードの統合能力の重要性を軽視していると指摘します。さらに、小米は「玄戒O1」の開発詳細(たとえば、自社開発の割合やアーキテクチャ)を公開しておらず、どの程度「自社開発」なのか不明です。
スマートフォン向けSoCチップの開発は極めて難易度が高く、完全な自社開発が可能な企業はアップル、ファーウェイ、サムスンなどごく少数です。小米は2014年に「松果電子」を設立してチップ開発に着手しましたが、初期の「澎湃S2」プロジェクトは失敗に終わるなど、苦戦を強いられてきました。今回の3nmチップの発表は「飛躍的進歩」に見えますが、130億元(約2600億円)の研究開発費は、完全自社開発の3nmチップを支えるには不十分とされています。おそらく、高通やARMの技術を組み合わせて設計されたものでしょう。一方、ファーウェイは14nmプロセスに制約されながらも、自社アーキテクチャとHarmonyOSの最適化により、フラッグシップ体験を実現しており、統合能力の高さを示しています。
小米の「玄戒O1」は、完全な自社開発ではなく、高通やARMの技術フレームワーク、TSMCの製造プロセスを活用した「自社開発」チップである可能性が高いです。この発表は、ブランドの高級化と技術力のPRを目的とした戦略的動きであり、短期的には高通のサプライチェーンに影響を与えるものではありません。高通CEOの発言は、技術支配力への自信と、小米の「自社開発」の限界を浮き彫りにしています。
(中国経済新聞)