2025年第1四半期(1~3月)の中国自動車業界において、主要9社の中でBYD(比亜迪)が売上高1703.6億元(約3.4兆円)で首位に立ち、圧倒的な存在感を示した。一方で、東風汽車は売上高26億元(約520億円)と最も低く、BYDとの売上格差は2021年の9倍から64倍にまで拡大した。本記事では、主要自動車メーカーの業績動向とその背景を分析する。
過去5年間の第1四半期を振り返ると、BYDの売上高は2021年の409.9億元から2025年には1703.6億元へと約4倍に急増した。この成長は、BYDがサプライチェーンにおける垂直統合を進め、コスト最適化と規模の経済を追求してきた結果である。特に、新エネルギー車(NEV)市場でのリーダーシップが、同社の収益拡大を牽引している。BYDはバッテリー生産から車両製造までを自社で一貫して手掛けることで、コスト競争力と供給の安定性を確保している。

BYDと並び、民営自動車大手の吉利汽車(Geely)も好調な業績を記録した。2025年第1四半期の売上高は725億元で、前年比25%増となった。吉利の販売台数は70.4万台(前年比48%増)で、過去最高を更新。特に新エネルギー車の販売台数は33.9万台に達し、新エネルギー分野への転換が業績に大きく貢献した。コスト削減と規模の経済の効果が、吉利の収益力向上を後押ししている。
一方、BYDと吉利を除く7社は売上高が前年比で減少した。特に、賽力斯(Seres)は売上高191.47億元で前年比27.91%減と、減少幅が最も大きかった。これは、販売台数が6.84万台(前年比40%減)に落ち込んだことが主因である。賽力斯はモデル切り替え期による生産制約が影響したが、2025年下半期には新型車「問界M8」の生産拡大や香港市場上場後のグローバルリソース統合により、成長軌道への回帰が期待されている。
BYD以外で売上高1000億元を超えた企業は、テスラと上汽集団である。テスラの2025年第1四半期の売上高は193.35億ドル(約1394億元)で、前年比9.2%減となった。2024年と2025年の第1四半期で連続して減収となり、注目すべきは、テスラの売上高がBYDに初めて抜かれたことである。過去5年間、テスラは第1四半期の売上高で首位を維持してきたが、BYDの急成長によりその地位を譲った形だ。
(中国経済新聞)