「ガソリン代が浮くと思ったら、バッテリー交換費で全部吹き飛んだ!」
最近、中国の増程車(レンジエクステンダーEV)ユーザーの間で、バッテリー劣化に関する不満と怒りの声が噴出している。
北京市の張さん(仮名)は、2023年に28万元(約563万円)をかけて某増程SUVを購入。しかし1年後、4S店の診断結果は衝撃的なものだった。
「バッテリー健康度76%、航続距離は購入時より30%減少」
張さんは「“電気もガソリンも使えるから安心”って営業マンに言われたけど、今では病院よりも頻繁に充電に通ってる」と、怒りを露わにする。
実際、中汽研(中国汽車技術研究中心)のデータでもこの問題が裏付けられている。
走行距離10万km時点でのバッテリー健康度を見ると、テスラ・モデル3は89.3%を保っているのに対し、理想ONEはわずか75.6%——バッテリーの劣化速度は純電動車の約1.4倍。
このままでは、7~8年でバッテリー交換を余儀なくされ、その費用はガソリン車の5年分の燃料代に匹敵するという。
バッテリー劣化を早める「三大要因」
1. “小馬拉大車”(小さな馬が重荷を引く)増程車の電動航続距離は平均150kmに過ぎない。1000km走行するためには7回の充放電が必要で、これは純電動車(500km航続距離で2回)より遥かに過酷。
2. 過剰な急速充放電
パフォーマンスを保つため、小型バッテリーが大電力で稼働。急加速時には内部温度が急上昇し、材料の劣化が加速。
3. “電気モード依存症”のユーザー
90%の増程車オーナーが“充電命”。「電気の方が安いから、ガソリンは使わない」と語るユーザー多数。その結果、バッテリーが酷使され、6000km走行で健康度が80%まで低下した例も。
だが、4S店は「使用法の問題」として対応せず。
さらに深刻な“隠れた問題”もある。
エンジンの騒音問題:「トラクターみたい」と表現されることもあり、渋滞時にエンジンが何度も起動・停止を繰り返すことで耳鳴りを訴えるユーザーも。
• 実燃費の悪化:高速道路ではガソリン車より燃費が悪化。理想ONEのユーザーは「百kmあたり8リットル、トヨタ・ハイランダーより高い」と実情を明かす。
こうしたバッテリー問題を見越して、トヨタは初めからニッケル水素電池+浅い充放電という“長寿命戦略”を貫いてきた。それに対し、一部の中国メーカーはコスト優先で「寿命の短い設計」を採用し、補償期間終了後にユーザーが交換費を負担する“ビジネスモデル”をとってきたとの批判もある。
現在、尊界、小鵬などのメーカーは急遽、大容量バッテリーへのシフトを進め、純電航続距離を360km超に引き上げている。だが、ネットでは「今さら遅い」「最初からそうしろ」と冷ややかな声も多い。
一部の専門家は「ユーザーの使い方が間違っている」として責任を転嫁するが、SNS上では「車を使うのに“バッテリー看護師”の資格が要るのか?」と反論が殺到している。
そもそも、増程車は“グリーンナンバー(環境車両の特権)”を得るための政策対応型商品だという指摘もある。ガソリン車では手に入らない都市部の登録枠を得るための“隠れ蓑”として、消費者を惹きつけていたのだ。
いま、「航続距離不安を解決する」はずだった増程車が、実はその不安をユーザーに“押しつけただけ”だったという現実が露わになりつつある。
(中国経済新聞)